障子の向こう側に感じた恐怖

和室

 

この話は私が幼い頃の話で、

5歳くらいだったかと思います。

 

私の寝ていた部屋は2階の6畳一間で、

 

階段を上がったところには

小さな廊下があり、

 

部屋とは障子で仕切られていました。

 

その障子は真ん中が曇りガラスで、

 

その周りは木の枠がいくつもあり、

白い障子紙が張ってあるものでした。

 

いつも寝る時は奥から私の父、母、

そして障子の前が私という感じの、

 

親子3人で川の字に寝ていました。

 

季節はいつだったか覚えておりませんが、

ある晩のこと。

 

その障子の向こうの小さな廊下から、

物音がしました。

 

大きな音だったので、

 

私は勿論、

父も母も目が覚め、

 

父が起き上がって障子を開け、

見に行きました。

 

すると、

 

父が桟(さん)に立てかけておいた

釣竿が落ちました。

 

「ネズミのいたずらかな・・・」

 

の様な事を言っていました。

 

すぐ布団に戻って、

父も母も私も寝ていたようです。

 

それからどのくらいの時間か経ったのか、

私だけ目が覚めたのです。

 

そして、

とにかく怖いのです。

 

怖くてガタガタ震えるのです。

 

その障子の方向がもの凄く怖くて・・・

 

母を起こそうと思い、

半身で布団から出ようとして、

 

障子の方向は見ないようにと

思っていたのですが・・・

 

でも何かが気になる・・・

 

つい目をやると、

 

障子の曇りガラスのところが

白く光っていて、

 

障子の向こうに黒い人影が見えたのです。

 

廊下の向こうには窓があり、

 

雨戸を閉めていたので、

光は入って来ません。

 

母を起こす以前に、

怖さのあまり布団に潜るように入り、

 

そのままずっと膝を抱えながら、

まん丸になっていたのを覚えています。

 

いつのまにか寝ていたようで、

起きると朝になっていました。

 

父も母も、

なぜか寝床はそのまま。

 

なにやら1階で話しているようで、

 

電話が何度もかかって来ては、

また電話をしている・・・

 

その時のことは大きくなってから

知ったことなのですが、

 

父の叔父が自殺をされたようです。

 

当時、うちの近くに住んでいた

父の叔父が亡くなった家は、

 

私たちが寝ていた部屋から

障子のある方向にあり、

 

恐怖で震えたあの夜、

 

父の叔父は部屋の窓を全開にして

首を吊っていたそうです。

 

うちの家の方を向いて・・・

 

(終)

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