向かいの民家の窓から見られている
私は小学生の頃、
そろばん教室に通っていました。
塾舎は二階建ての建物で、
左右にある大きな窓から外を覗くと、
それぞれ民家と茂みが見えました。
ある日、
塾舎の右の窓からみて向かい側の
民家の窓から、
誰かが薄いカーテン越しに、
こちらを見ているのに気が付きました。
その時は友達らと一緒に、
「こっち見るなよな~」
「まじムカツク~」
程度にしか思っていませんでした。
けれども、
次の日も見ていました。
その次の日も、次の日も・・・
一週間くらい経った後、
消防団の父から、
「あの家(向い側の民家)の方が、
首を吊って亡くなった。
ずいぶんと長い間、
誰も気が付かなかったらしい。
首を吊ったのは窓際だった」
と聞かされました。
どうやら自分達は、
首を吊って亡くなっていた人の遺体を、
誰かがこちらを見ていると
勘違いしていたようです。
けれど、
確かに一日だけあったんです。
薄いカーテンと厚いカーテンの
二枚が閉じられていて、
窓の奥が全く見えなかった日が・・・
今思えば、
どうしてなんでしょう。
その方は亡くなっていたはずだし・・・
あの部屋にもう一人、
誰かが居たのでしょうか・・・
その日は良く晴れた夏日和で、
日差しがとてもキツイ日でした。
(終)