部活終わりに8人で乗り込んだ廃墟には

カセットテープ

 

中学生の時の話。

 

家から少し離れたところに、

明らかに誰も住んでいない廃墟があった。

 

壁一面に蔦(つた)が生い茂った、

“いかにも”という感じの一軒家。

 

ある日の部活終わり、

同級生8人で忍び込むことに。

 

時間は夜の8時頃。

 

ドアが開かなかったので裏へ回り、

部屋の窓から侵入した。

 

真っ暗な中、

懐中電灯を照らした先には、

 

無数の人形とボーリングのピンが

壁に沿って並べてあった。

 

お祭り気分で乗り込んだものの、

この時点でかなりテンションはダウン。

 

8人もいるのに、

口数はかなり減っていた。

 

みんな帰りたくなっていたが、

 

せっかく入ったんだからと、

もう少し捜索してみる事に。

 

さらに奥に進むと、

そこは畳の部屋。

 

かなり傷(いた)んでいたらしく、

 

歩く度に足が畳を貫き、

その度にギャーギャー喚(わめ)いた。

 

次に、

リビングのような部屋に進んだ。

 

真ん中には大きなテーブルが一つ。

 

見ると、

何かが置いてあった。

 

近づいてみると、

 

それは一枚の置手紙と、

何かを録音したらしいカセットテープ。

 

置手紙にはこう書いてあった。

 

『お父さんありがとう』

 

特に怖いことが書いてあった

わけではないのに、

 

何か寒気を感じて、

俺らは撤退することにした。

 

外に出るとほっとしたのか、

みんな堰を切ったように話し始めた。

 

※堰を切る(せきをきる)

こらえきれなくなって、どっと溢れ出ることの例え。

 

そして、

手紙の横のテープの話題に。

 

「あれは何が入ってたんだろう?」

 

などと話していると、

友人の一人がぼそっと呟いた。

 

「俺、持ってきちゃった・・・」と。

 

その場には再生するものが無かったので、

 

その友人が家に持ち帰った後、

責任を持って聞くことになった。

 

持って帰った彼は少しビビりながらも、

とりあえずラジカセで再生してみた。

 

・・・・・・

 

無音。

 

10分以上聞いたが、

ずっと無音だった。

 

古いテープだったし、

消えちゃったのかな?と思い、

 

再生したまま彼は漫画を読み始めた。

 

しばらく漫画を読んで、

テープのことを忘れていた時、

 

ラジカセから女の人の声が聞こえた。

 

「オトウサン・・・

コロシテクレテアリガトウ・・・」

 

(終)

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