私の寝言に慄いた母と姉

医療器具 手術

 

私が中学生だった時の事。

 

あれは確か秋だったと思う。

 

ある夜、母と5歳上の姉と

私の三人で居間にいた。

 

いつのまにか私はそこで寝てしまい、

 

23時近くなって母に起こされ、

自分の部屋に行ってベッドで寝たが・・・

スポンサーリンク

知るはずのない事実を口にした私・・・

翌日の夜21時頃、

 

当時は美容師の卵だった姉が

まだ帰宅していない時間だった。

 

母と二人で居間にいて、

 

なぜか母が元気がないので

おかしいなと思っていた。

 

すると母が私に、

 

「昨日○○(私)が言ってたことね、

○○は知ってたの?」

 

と言ってきた。

 

「何のこと?

私、何か言ったっけ?」

 

と訊き返すと、

母は口篭ってしまって話そうとしない。

 

どうやら私は寝ながら母と姉に

何か言ったらしいが、

 

私には記憶がない。

 

「私、寝ぼけてたのかなあ?

 

でも何を言ったのか気になるから

教えてよ!」

 

と母に頼んだが、

ますます暗い顔をするばかり。

 

そんな母の様子を見ていると、

それ以上の追求は出来なかった。

 

それに、

翌日には忘れていた。

 

それから8年後、

姉が結婚することになった。

 

両親はもちろん喜んでいた。

 

母の様子にもおかしいところはなかった。

 

式と披露宴の前日のこと、

 

寝ようとしていた私に、

母が深刻な顔で話しかけてきた。

 

「あんたが中学生の頃・・・」

 

あの夜の事だった。

 

私は母に妙な事を言われたのは覚えていたが、

その前夜の事は相変わらず思い出せなかった。

 

「私、寝ながら母さんと姉ちゃんに

何か言ったんだよね?

 

寝ぼけてたから未だに思い出せないけど、

どうしたの急に?」

 

私が笑いながら訊くと、

母はあの夜の事を話してくれた。

 

8年前のこと、

 

姉は当時付き合っていた彼氏との間の

子供を妊娠した。

 

(結婚相手とは違う男性)

 

姉と彼氏は「結婚し子供を育てるつもりだ」、

と母に相談したが、

 

二人とも社会人になりたての18歳。

 

その少し前までは二人揃ってDQNで、

双方の親に心配と迷惑をかけまくっていた。

 

家庭を持ち、

責任を持って子供を育てるには、

 

まだ二人は幼すぎる。

 

そう考えた母は、

 

今回の子は中絶するよう説得し、

最終的に二人はそれを受け入れ、

 

姉は母の付き添いの元で手術を受けたという。

 

問題となったあの夜は、

姉が手術を受けてから数日後の事だった。

 

私が中学生という多感な時期なので、

 

両親と姉はこの件について、

私には絶対に秘密ということにしていた。

 

私が居眠りを始めたので、母と姉は、

 

「生まれてくるはずだった子には

可哀相なことをしたけど仕方なかった・・・」

 

みたいなことを小声で話していると、

寝ている私が何かブツブツ言い始めたそうだ。

 

「寝言だ」と、

さして気に留めなかった母と姉だが、

 

何回目かに私が言ったのは、

はっきり聞き取れたという。

 

『お前ら、母と娘の二代続けて

同じ事をしやがって』

 

普段、大人しい口調の私とは思えない

荒っぽい言葉遣いだったそうだが、

 

それよりもその言葉に二人は仰天したらしい。

 

姉は数日前に中絶した。

 

そして母も、

 

姉と私の間に生まれてくるはずだった子を、

当時の生活の苦しさから中絶してしまっていた。

 

姉は当時3歳。

 

預けられるところもなかったので、

母に産院へ連れて行かれたのを覚えていた。

 

だが家族の誰も、

私には話したことがなかった。

 

・・・なのに、

 

私はそれを知っているような事を言って、

二人を罵っている。

 

『畜生め』

 

いかにも憎々しくそう言って、

私は黙ったらしい。

 

話を聞かされて、

私はただビックリ。

 

姉と母の中絶の件は、

もちろん全く知らなかった。

 

ではどうして中学生だった私は、

寝ながらそんな言葉を吐いたのだろう。

 

姉はその後、色々あってその彼氏と別れ、

真面目に仕事をしていた。

 

そのうちに今の彼と出会い、

結婚することになった。

 

母としては、やはり姉の中絶、

 

そして私の寝言が

心に引っかかっていたに違いない。

 

私としては、

中絶の事実を知ったからといって、

 

母や姉を軽蔑するような気持ちは

一切起こらないが、

 

(仕方ないことだったと思うし、

二人とも供養はしているとの事)

 

誰かが(祖先?)私の口を通じて

二人を非難したのかなと、

 

そちらの方が気になった。

 

水子の怨念ではないことを真剣に願った。

 

ちなみにその後、姉は男の子を二人産み、

今ではすっかり教育ママだ。

 

なぜDQNっていざ自分が子持ちになると、

教育ママ(パパ)になるんだろうね。

 

(終)

スポンサーリンク

あなたにオススメの記事


コメントを残す

CAPTCHA


スポンサーリンク
サブコンテンツ

月別の投稿表示

カレンダー

2024年3月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

【特集】過去の年間ランキング

(2022年1月~12月)に投稿した話の中で、閲覧数の多かったものを厳選して『20話』ピックアップ!
【特集】2022年・怖い話ランキング20
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
アクセスランキング

このページの先頭へ