心霊スポットからの実況メール 1/3
ある日の夜だった。
普段はあまり遊ばない友達から、
携帯にメールが来た。
『今から肝試しに行くんだけど
一緒に行かない?
A君とB子とC君が一緒なんだけど、
どうかな?』
そんな内容だった。
私は既にお風呂にも入って、
のんびり寛ぎ中の夜8時頃。
ちょっと気にはなったけれど、
久しぶりのゆったりした時間が
もったいなくて断った。
『えぇ~残念~。
あっ、そうだ!!
せっかくだから実況メールしてあげるよ~。
目的地は●●病院だし』
●●病院と言えば、
地元では結構知られた心霊スポット。
週末だし他にもいるんだろうなぁ~
なんて思いつつ、
適当にメールの相手をしながら
のんびりした週末の夜を過ごしていた。
この後、
あれ程の事が起こるなんて思いもせずに・・・
取り返しのつかない顛末
結局、彼女たちはさらに2人の友達を加え、
6人の団体で●●病院に向かっているようだった。
メールはとめどなく続く。
興奮する気持ちを抑えられないのが
手に取るように分かる。
たまに、車内で撮ったと思われる
画像や動画が添付されていた。
運転手のA君と予備運転手のD美以外は、
ビールも飲んだりして騒いでいるようだ。
楽しそうなメールを見る度に、
ちょっぴり後悔していた。
(結局メールで付き合わされるなら
行った方が良かったなぁ)
なんて思っていた。
程なくして、
車は目的の病院に辿り着いた様だ。
『それでは、A突撃部隊、出撃します!』
なんて張り切ったメールと共に、
病院の入り口の写メ。
嫌な雰囲気が漂う写メだった。
何となく霞(かすみ)がかかった様に
見えなくもない。
(心霊スポットなんだから、
そんな感じがして当然よね)
なんて思いながら。
そんな私は既に、
この実況を楽しみ始めていた。
夏に良くある特番みたいに。
『まずは1階、診察室~。
大したことないね~。
A君が机あさってま~す。
何にも目ぼしいものはないみたい』
写メがあったので見てみる。
《赤い光?街灯かな?》
『街灯はないよ~?
ライトが反射してるんじゃない?
とりあえず病棟に移動するみたいだから
行くね~』
ライトの反射?
あんな高い位置で?
しかも、反射する様なものも
無いみたいなんだけど・・・
なんだかドキドキしてきた。
嫌な予感もしてくる。
『2階到着だよ~。
なんだかこわぁ~い(笑)』
今度は動画だ。
ワイワイガヤガヤと騒ぐ声。
暗闇に交差するライト。
レポーターちっくなB子の声。
(・・・・・?)
見終わった後、
なんとなく違和感があった。
もう一度見てみる。
(・・・・・あれっ?)
一瞬映るベッド・・・
さらに繰り返し見ていくと、
私は青ざめてしまった。
その部分を静止画で抜き出してみると、
間違いなく映っている。
慌ててその画像を添付して返信した。
《足!映ってる!ヤバいよ、逃げて》
A君から電話が来た。
私は驚きながら出る。
「お前、画像に何かしただろ?
やめろよ、まったく!」
後ろがなんとなく騒がしい。
みんな動揺しているみたいだ。
「私、何もしてない!本当に映ってたの!
早くそこから出た方がいいよ!」
叫ぶように告げたその時、
【ウフフ】
「・・・えっ?」
「何だよ、どうしたんだよ。
脅かすようなことやめろよ」
【ニガサナイワヨ】
「えっ・・・!何これ?」
「お前だろ!
お前だと言ってくれ!」
[キャーッ!!]
電話の後ろから叫び声が聞こえた。
私はパニックになりながら、
必死に電話に向かって叫んでいた。
「逃げてー!!」
「何だよあれ!おい!!
みんな1階まで走れ!」
電話を切ることも忘れたように、
少し遠くからA君の声。
何が起こっているのか分からない。
叫び声や走る足音に混ざり、
耳障りな女の笑い声。
私は身動きも出来ず、
携帯に耳を傾けながら祈り続けていた。
誰かの名前を泣きながら叫んでいる声。
断末魔の様な絶叫。
悲鳴・・・笑い声・・・悲鳴・・・笑い声・・・
頭がおかしくなりそうだった。
どうしたらいいのかも分からず、
携帯から耳を離す事も出来ず、
ただただ泣いていた。
しばらくすると、
まるで嘘の様に静まり返る。
私は意を決して警察に電話をする。
電話に出た警察官に怒られたが、
一応現場に行ってくれるらしい。
が、一安心とはいかず、
不安に追いつめられる。
私は車のキーを握りしめ、
玄関を飛び出していた。
(警察も来てくれるなら大丈夫!)
なんて甘いこと考えながら、
現場に向かった。