嫌われ者の婆さんの火葬にて
今はもう廃村になってしまった小さな集落の話。
当時はまだ、火葬は山で野火送りで行われていました。
村で強欲や残虐、非常識で有名だった独り者の婆さんが亡くなった時、祖父や村の人らが火葬場でその婆さんの遺体を燃やしていたそうです。
薪を積み上げ、その上に死体を乗せ、上にムシロを掛けて遺体を燃やしていると、婆さんの頭の部分のムシロがゆっくりと持ち上がっていく。
※ムシロ(筵)
藁(わら)やイグサなどの草で編んだ簡素な敷物。
気味悪く思いながら見ていると、ムシロが崩れて真っ黒に焦げた婆さんの頭が露(あらわ)になった。
そこには『二本のツノ』が生えていたそうです。
爺さんたちは坊さんを呼んできて、燃やしている間はずっと念仏を唱えてもらった。
火葬は朝までかかり、骨も原型をろくに残さないくらいまでに燃やし尽くしたとの事。
「あの婆さんは○○の家のもんやったが、あんまし酷いことばっかしとったから、ほんまもんの鬼になってまったんやろな」
「わしらみんな、あの婆さんは鬼じゃと言うとったが、まさかほんまもんの鬼やとは思いもよらなんださ」
年に1~2度、離村した集落のみんなが集まって飲んだりする度に、そんな話を村の年寄り達から聞きます。
(終)