肝試しをした翌日に
僕が高校生の頃の話です。
ある晩、先輩たちと6名で飲み会をしていると、肝試しをすることになり、某トンネルへ行くことになりました。
そこは山の中腹にあり、近くには廃屋があって、すぐ隣に軽自動車が一台通れるぐらいの真っ暗な気味の悪いトンネルです。
話を聞くと、その廃屋では一家惨殺があり、その中のお婆さんが隣のトンネルに逃げたところ、犯人に追い詰められ殺されて、気が狂った犯人もその場で自殺したという。
真っ黒い波を打った何かが・・・
酒も入り、初めての肝試しということで、僕はワクワクしていました。
車に乗り込んで1時間ほど走り、現場近くに車を停め、5分ほど歩くと到着しました。
そこは、想像以上に気味の悪い場所でした。
廃屋は昔ながらの一軒家で、縁側から中が一望でき、家の中は布団や家具が散乱していました。
あまりの不気味さに、トンネルだけ入って帰ろうということになりました。
トンネルに入ると、夏なのに涼しく、足元はドロドロで、何とも言えない空気が漂っていたのですが、皆無事に出てくることが出来ました。
トンネルを出た僕たちは帰ることになったのですが、なんとなく廃屋を眺めていると3名が先に車に戻ってしまい、気付いたら僕を含めた3人だけになっていました。
「先に行っちゃったね。俺らも帰るか」
・・・なんて言っていたその時でした。
山の上の方から「キャー!!」という女性の声が聞えたのです。
「聞こえた?」
「聞こえたよ。早く帰ろう」
3人とも、その声を聞いていました。
怖くなった僕たちは急いで車に戻りました。
帰りの車の中では、怖かった半面、話題が出来たと思い、僕は少し上機嫌でした。
次の日。
夜、母と二人で食事をしていた時にその話をしました。
「昨日さ、先輩たちと肝試しに行ったんだ」
僕は母に事細かく話しました。
すると、僕は段々と寒くなってくるのを感じました。
頃は真夏です。
クーラーをつけていましたが、涼しい程度です。
話が進むにつれ、僕はどんどん寒くなっていき、話が終盤に近付くと歯をガチガチしながら話していました。
「なんだこれは?!」と思いながら話を進め、震えながらやっとの思いで話し終えました。
話が終わると、今度は母が徐々に俯き始めました。
様子がおかしいと思っていると、母が弱っていくにつれ、僕の震えが少しづつ治まってきました。
僕の震えが止まり、母が完全にダウンすると、「今あんたから真っ黒い波を打った何かが私に入ってきた。これは私が何とかする。だからあんたはもうそんな所に行っちゃだめだよ」と母。
何がなんだか分かりませんでした。
今、母は元気です。
僕はそれ以来、肝試しへは行っていません。
(終)