先輩が俺を探してる理由
昔の話だが夏休みに中学校の理科室で、
先生に断って実験をさせてもらったんだよ。
午前中、先生が部活でいる時だけ
って条件で。
すげーうれしくて、理科室行ったら
知らない先輩が別のテーブルで実験してる。
それで、1週間も一緒に実験してるうちに
色々教えてくれて仲良くなったんだけど、
ある時、自分が少し遅れて、
午後10時ごろかな。
先輩が理科室で倒れててさ。
死因は持病の心臓関係の病気だったらしい。
葬式にも行って、お棺の横に
実験レポート置いたのを覚えてる。
一人になった理科室は寂しくてさ。
中学卒業って日にも、
先輩の墓参りに行ったよ。
それで今、俺は母校で理科教師をやってる。
でもさ、教えてる生徒たちがたまに言うんだよ。
「理科室に幽霊がでる」って。
もしかして、先輩?とか思うけど、
生徒の前にしか出て来ないんだとさ。
それで、こう言うんだって。
「○○(俺の名前)はどこだ?」
○○って名前は結構ポピュラーだから
話題にはならないけど、
先生のこと探してるんじゃない?
とか、生徒に言われる。
やっぱり覚えてるのか・・・。
先輩の研究結果を、
俺の研究として出展したのを・・・。
先輩、ごめんなさい。
冬休みに時々、理科室に行くんだ。
先輩に逢いたいと思ってな。
でも、いつも廊下で止まっちゃうんだよ。
先輩が俺を探してる理由を考えてしまってな。
(終)