男女4人で肝試しを楽しむつもりが 1/2

墓地

 

元バイト先の先輩の綿野さんは、

日系ブラジル人の2世。

 

陽気で馬鹿でイカレテいて、

サンバ好きのサッカー大好き人間。

 

そんな人の話です。

 

仕事が終わって帰ろうとすると、

 

綿「今から肝試し行かね?」

 

綿野さんが唐突に言う。

 

「今からっすか?

しかも、男二人でっすか?」

 

綿「んなわけないでしょアータ!

理沙ちゃんとサエちゃんとですよー」

 

この時期の綿野さんは、

美川憲一風に喋るのにハマッていた。

 

そして、理沙ちゃんとサエちゃんは、

お店の常連さんです。(仮名)

 

「おーマジっすか!

でもマスターにバレたらヤバいっすよ・・・

 

行きましょう!(笑)

 

綿「そーやなー。

バレたらあれやし・・・

 

って、行くんかーい!」

 

そんな他愛もない会話をしつつ、

集合場所へ向かった。

 

上京した僕は車を持っておらず、

 

綿野さんも貯金の出来ない人だったので

車を持っていない。

 

情けなくも女の子の運転に、

後部座席に座る男二人。

 

「○○君(僕)って、

一人暮らしだったよね。

 

いいなぁー」

 

「いやいや、

 

都会生まれで都会育ちの

二人の方が羨ましいよ。

 

僕は根が田舎者だからねー」

 

「綿野さんは一人暮らし?」

 

綿「いや、違うよ。

家族で住んでる」

 

「へぇー意外」

「へぇー意外」

 

理沙ちゃんとサエちゃんが

口を揃えて言う。

 

綿「大体なんで一人暮らしがいいの?

 

家族で住めるんだから、

それが一番良いに決まってる」

 

「えー、でもだってたまに、

ウザくなる時もあるじゃん?」

 

綿「ない!ないない!

 

これだから日本人は、

離婚や親を殺したりなんて・・・」

 

バリバリのカトリックで家族想いの

綿野さんの説教を聞き流しながら、

 

気付けば目的地に到着。

 

今日の肝試しスポットは、

日本兵士の碑。

 

※碑(えりいし)

事跡(成し遂げた成果)などを示す文字を彫り刻んだ石。

 

お墓が密集している公園だ。

 

やはりゾクゾクする。

 

なにが僕を一番ゾクゾクさせるかと言うと、

綿野さんだ。

 

出会って2ヶ月。

 

多少はこの人を理解出来たつもりだが、

あくまで“つもり”だ。

 

何か期待させる・・・

そんなものはこの人にない。

 

何かゾクゾクさせる・・・

そんなものがこの人にあった。

 

最初の計画では男女ペアになって

一組ずつ行き、

 

大きな慰霊碑の写メを撮る。

 

そんな予定だったが・・・

 

綿「予定変更!

やっぱり皆で行こうぜー!」

 

理由は、

大勢で行った方が面白いから。

 

綿野さんの提案に、

あっさりと予定は変わった。

 

僕が理沙ちゃんと組みたい事を、

知っての発言とは思えなかった。

 

殴りたい。

 

車を降り、

階段を上っている最中、

 

「ウォーン」

 

犬の遠吠えがする。

 

「ウォーン」

「ウォーン」

「ウォォーン」

 

数回の同じ出来事に、

時間帯が恐怖を増す時間。

 

この二つが重なると、

女はコジツケの如く、こう言う。

 

「なんかヤバくない?」

「もうやめよーよ」

 

まだ目的地にすら着いてないのに、

“もう”はおかしい。

 

そんな事を綿野さんが小声で呟いた。

 

しかし、

 

前提に”常連さん”である女の子に

無理強いも出来ず、

 

考えていると即座に綿野さんは、

 

綿「じゃあ、車でちょっと待っててよ。

 

俺達がちょっと見てきて、

大丈夫っぽかったら皆で行けばいい。

 

俺達が確認してくるよ」

 

「んー、わかったー」

 

恐る恐る車へ戻る女の子達と、

階段で見守る僕と綿野さん。

 

車に乗ったのを確認し、

階段をまた上る。

 

綿「しかし、女はバカだよなー」

 

綿野さんが言う。

 

「まぁ、女の子はあのぐらい怖がりが

可愛いじゃないですか」

 

綿「ん?なに言ってんの?」

 

「え?怖がりの話でしょ?」

 

綿「全然違う。安易だって話だ」

 

「え?」

 

綿「お前、本気でわからないの?

バカだねー。

 

俺がさっき言ったじゃん?

大丈夫ぽかったら皆で行けばいいって」

 

「はい・・・」

 

綿「もし大丈夫っぽくなかったら、

どーすんのかね?

 

俺らの身に何かあっても、

あっこで待つのかね?

 

女は安直すぎる。

 

希望してる一つのパターンを置くと、

それに安心を乗せるでしょ?

 

それで、ありもしない確信。

 

ダハハ、マジでバカ。

アハハハハハー」

 

なるほど!と素直に関心した。

 

しかし、

安全な国”日本”で生まれた僕達に、

 

そこまで考えろと言う方が馬鹿げている、

とも思った。

 

その反面、

 

“ブラジル”の貧困層で育った綿野さんは、

考えなきゃ生きていけなかったのかな・・・

 

とも感じた。

 

しかし、

 

僕もありもしない確信を、

一つしてしまった。

 

今日は必ず何か起きる。

 

何故だかあの時は、

本当にわかった。

 

(続く)男女4人で肝試しを楽しむつもりが 2/2

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One Response to “男女4人で肝試しを楽しむつもりが 1/2”

  1. 匿名 より:

    碑をずっと『ひ』って読んでました。
    えりいし…だと…?

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