環境アレルギーを発症した中年女性
ふと、何年か前にあったドキュメンタリーを思い出した。
環境アレルギーを発症したという中年女性の星野さんの日常をテレビで紹介していた。(名前は仮名)
星野さんはそれまで何ともなかったのに、ある日いきなり息苦しくて倒れ、病院で検査をした。
その結果、星野さんは空気中の異分子にアレルギー反応が起きる重度の環境アレルギーであり、掃除や料理(煙、水蒸気、調理中の匂い)、外出(排気ガス)や買い物(店内の香り、他人の埃、等)もダメな状況に陥っていた。
人として衆人に晒していいのか?
さらには、食べ物も単体の未調理品のみで、他人との接触は特殊加工のマスクを付けた上、相手に全身ビニールのコートを着てもらった時のみOKとかで、普通の生活が全く出来なくなってしまったという。
それでもドキュメンタリーの最初の頃は、そういう不自由な生活を星野さん自身が苦笑いで紹介していたり、ご主人も協力的で仲が良さそうだった。
しかし、番組が進むにつれて星野さんの表情が暗くなっていき、番組スタッフに対しても「人の不幸を撮って何が面白いのよ!」とブチ切れて当たるとか、ご主人や健常の人を罵詈雑言で呪う言葉が出てきたりした。
※罵詈雑言(ばりぞうごん)
きたない言葉で、悪口を並べ立ててののしること。
その後、ご主人が全く登場しなくなったと思えば、さりげないナレーションで「ご主人は仕事の都合で現在単身赴任しています」と流れた。
そして突然最後に、「この収録の1ヵ月後、ご主人から星野さんが自ら命を絶ったと連絡が入りました」というナレーションと共に、星野さんの遺影が映されるというエンディングで私は驚いた。
そういった環境アレルギーの現実を世の中に知らしめるのが星野さんの本望なのかも知れないけれど、「最後の方の彼女の容姿や人格の変貌を人として衆人に晒していいのか?」と、見終わった時に色々と番組の趣旨に疑問が残った。
(終)
アレルギーを好き嫌いの問題と勘違いする人が昔は居たから(今もいるかな?)、切実さを伝えるのは必要なことかもしれないが……。