嘘が事実になる友達
大学に入って最初に出来た友達が、
不思議なやつだった。
お互いオカルトに傾倒していたためか、
僕らはすぐに仲良くなった。
お互いオカルトにハマったきっかけは、
小さい頃の不思議な体験ではあったけれど、
僕の「飛行機を隕石と見間違えた」、
とか言うレベルのきっかけとは、
レベルというか・・・
次元が違った。
彼は小さい頃、
自分のついた嘘が事実になる事に
気づいたらしい。
そして、
それは今でも続いている
と言っていた。
僕は信じなかった・・・
当然、全ての嘘が現実に
なるわけではなく、
嘘のまま終わる事も
ままあったようで、
僕は最後まで
彼の話は信じなかった。
確かに、
彼の予想や予言は
よく当たっていたけれど、
むしろ、
嘘というよりも未来が見える、
とでも言ってくれた方が
わかりやすかった。
彼が話す自身が体験した
恐怖体験や不思議体験話は、
全て嘘だった。
しかし、
なぜかその体験に
身に覚えがあるだとか、
知り合いの体験に
そっくりだとか、
そういうことをよく言われていた。
僕も、彼の話に身に覚えが
あった事もあった。
いつも話し終えてから
気づくのだけれど・・・
それでも僕は信じなかった。
夏のある日。
彼から電話で、
『とんでもない嘘をついてしまった。
真実になってしまうかも知れない』
といった内容の相談を受けた。
彼の新しい面白イベントが
始まるのかと思った僕は、
会って詳しく聞くために、
彼のアパートへ向かった。
彼の部屋のドアを
ノックと同時に開けると、
彼は・・・首を括って
既に事切れていた。
整理整頓された机の上には、
大きく『僕は生きている』とだけ
書かれたノートがあった。
すぐに警察を呼んで、
色々聞かれたけれど、
彼の『嘘』の力については
説明し難いので話さなかった。
僕は、なんであんなに
冷静だったのだろうか。
元から・・・
アパートのドアを開ける前から・・・
初めて会った時から・・・
既に彼の死を知っていたような・・・
そして、
不謹慎にも疑問に思った。
果たして彼は、
あのノートに書かれた『嘘』を
いつ書いたのだろうか・・・
死ぬ前に書いたのか・・・
まさか死んだ後に書いたのか・・・
それ以来、
僕は取り憑かれたかの様に、
嘘の体験談を話すようになった。
いつか嘘が真実になったら、
彼の死を初めて受け入れることが
出来るかも知れない。
まぁ嘘だけど。
(終)