その小学校に伝わる七不思議の秘密
その昔、俺が通っていた小学校にはこんな怪談があった。
『満月の夜には学校のプールにプールの水を飲みながら月を見上げてニタニタ笑う男がいる』というものだ。
当時小学生だった俺は、家が学校のすぐ近くだったので一度この話を確認してやろうと考えた。
そして夏休みのある満月の夜、親友の江川(仮名)と一緒に、夜の9時に学校のプールまで親に内緒で出かけた。
俺たちは伝説になっていた
プールの正面口ではなく裏から塀をよじ登って中を覗くと・・・誰もいない。
もちろん本当にいると思っていたわけではないので、失望しつつも内心ほっとした気分で中まで入った。
しかし、プールサイドまで行った俺たちが見たものは、喰い裂かれた鳩の死体だった。
普通に考えれば猫にでも襲われたものと思うが、その時の俺たちはニタニタ男が喰ったものと思い込んでしまった。
やや失望気味だった俺たちは、途端に興奮した。
江川は笑いながら、「うぉー」とか「キャインキャインキャイン!」と走りながら喚き出す。
こいつは普段から調子に乗るとこういった変な行動をとるので、別に狂ったわけではない。
俺も、塀の上に立ってガッツポーズをする。
もちろん俺も、高い所に登るのが好きだっただけで狂ったわけではない。
日が過ぎて、2学期になって登校すると、学校では妙な怪談が噂になっていた。
その内容が、『満月の夜にプールの塀の上で奇声を張り上げて万歳している男がいる』というものだった。
一体、誰のことだ?
そもそも奇声を張り上げたのは、俺ではなくて江川だ。
俺と江川は、あの時のことはお互いに秘密にしようと約束した。
その後、俺たちは小学校を卒業して、江川は関西に引越してしまって縁が切れた。
それから7年が経った。
現在その小学校に通っている妹が、学校に伝わる七不思議について話していた。
それは、『満月の夜にプールの塀の上をケタケタ笑いながら走り回る男』というものだった。
さらには話に尾ひれが付いていて、『それを見てしまうと男は塀から飛び降りて追いかけて来る』のだそうだ。
なんだか知らないうちに俺たちは伝説になっていた。
(終)