2ちゃんねるの投稿の中には稀に・・・ 1/2
そもそも私が2ちゃんねるを
見るようになったのは、
友達の洋子(仮名)の影響です。
彼女に「面白いから見てみなよ」と
何度も勧められるまでは、
2ちゃんねるは酷い荒らしと下品な投稿
ばかりの掲示板と思っていました。
いろんな事件もありましたし・・・
でも実際に見てみると、
私のよく見る少女漫画板なんかは
とっても楽しくて、
「なんだ、
こんなことなら偏見を持たずに
もっと早く見れば良かった」
と思いました。
でも、
この前の金曜日のことです。
夕方遅くに洋子から電話があって、
「2ちゃんねるはもう止めた方がいいよ」
と言うんです。
あんなに面白がって勧めていたのは
自分なのに。
なぜかと不思議に思って聞くと、
逆に聞き返されました。
「あなたはいつもどの板の、
どのスレ見てる?」
「少女漫画板のスレいくつかと、
邦楽板、純愛板とか」
私はそう答えると、
なぜか小さくため息をついて、
「本当にそれだけ?
なら、良かった。
もしもってことがあるし、
責任感じてたから」
・・・と。
責任とか何とか、
それはどういうことかと聞くと、
「とにかく2ちゃんねるは、
もう止めた方がいい」
と言うばかり。
それから色々と話をして、
「電話じゃなんだから」
と、洋子がこの私のアパートに
来ることになったんです。
私は実家の祖母が倒れたというので
しばらく帰省していて、
洋子と顔を会わせるのは
十日ぶりくらいでした。
ドアの前に立っている彼女は、
なんだか凄く雰囲気が違います。
普段はうるさいくらい明るい子なのに、
妙に深刻な顔つきなんです。
目の下に薄っすらクマが出来て、
酷い風邪でも引いたあとって感じ。
私は彼女を部屋にあげ、
コーヒーを出して、
二人でこたつに足を突っ込みながら
向かい合って座りました。
洋子は黙ってコーヒーを
半分くらい飲むと、
「ネットって怖いよ」
と、ぽつりと呟き、
顔を強張らせたまま話し始めたのです。
洋子の高校時代からの友達に、
恵美(仮名)という子がいたのですが、
これが『見える人』なんだそうです。
洋子から話は聞いていたけれど、
私は普段あまり付き合いないし、
そんなの信じていなかったし、
どうせちょっとブサイクだからと
人の気を惹くために、
そんなこと言ってるだけじゃないかと
思ってました。
実際に洋子が恵美と居て、
不思議な体験をしたことは
無かったみたいだし。
一回だけ、
洋子と他の友達と私のアパートに
来たこともあるのですが、
人の部屋に入るなり、
きょろきょろあちこちを見て、
「うん、大丈夫」
とか小声で呟いていて、
変な子だと思ったのを覚えています。
その恵美が一週間ほど前に
洋子の部屋に来て泊まった時、
一緒に2ちゃんねるを見ながら
投稿していたそうなんです。
独身男性板とかでネナベやって
煽ったりしてゲラゲラ笑っていたら、
※ネナベ
ネット上で、男性のふりをした女性。
夜中の2時近くになって、
もう寝ようかとしていた時。
恵美が洋子のブックマークを見て、
「何これ?」
とクリックしたんです。
洋子は一瞬、
ヤバイと思ったみたいです。
それはオカルト板のスレだったので、
恵美がまた『霊感少女』ぶって、
ウザくなるから。
案の定、
恵美の様子が変わって、
マジに眉をひそめて、
「なに~これ~。
こんなの見ちゃ駄目だよ~。
いつも言ってるでしょ。
こういう話は面白半分で読んだり
するだけでもよくないんだよ。
このスレ、
ブックマークから削除しなよ」
洋子はオカルト好きだけど、
所詮、真剣には信じていないので、
そういう恵美の態度が鼻につくんです。
それに、
その時は勝手にブックマークを
削除されそうになって、
ちょっとムカついていたこともあり、
「こんなの、
どうせみんなネタだし、
雰囲気つくって遊んでるだけだから
別にいいじゃん」
と言ったのです。
そしたら、
恵美がモニターのスレッドをじっと見て
スクロールさせながら、
「ううん、違うよ。
これほんとヤバイ・・・」
と言うのです。
ネタとか作った話ばかりに見えるけど、
本物もあるって。
「ほんとに霊体験した人が
カキコしてるの?」
と洋子が聞くと、
「うん・・・それもある。
それはまだいいんだけど・・・」
と恵美が独特の暗い声を出して、
「この世の人が投稿したんじゃないのもある。
それがヤバイんだよ・・・」
「うそ?!
じゃあ、どれがネタでどれがその、
あの世の人からのカキコか、
恵美にはわかるの?」
と洋子は聞いたんです。
そしたら恵美が、
ずーっとスレを見ていって、
このレスはネタ、これもネタ、
これは実体験ぽい、これはネタ・・・
と、やり始めたんです。
洋子は正直、
『また出たよ、自称霊感少女が』
と心の中で思ったんだけれど、
恵美があまりにも真剣に
モニターを睨んでいるので、
ちょっとそれ自体が異様な感じで
怖かったそうです。
そして、
画面をスクロールしていた恵美が、
突然あるレスを指差して、
「これは・・・これ書いた人、
人間じゃないよ・・・」