公園の池に潜んでいた謎の生き物 1/2

暗峠

 

俺自身、

 

この事件を全部知っているわけじゃなくて、

肝心のところを知らない。

 

もし俺より知っている人がいたら、

逆に教えてほしい。

 

あの時に一体何があったのか。

 

今から14年ほど前、

夜な夜なバイクで峠へ走りに行っていた。

 

場所は大阪と奈良の境にある、

H道路という所。

 

そこで知り合った人に起こった話だ。

 

知り合いと言っても、

 

「ああ、あのCBRに乗ってる人か」

 

ってぐらいの知り合いで、

 

あまり話したこともなければ、

名前も知らない。

 

※CBR

本田技研工業が製造販売するオートバイのシリーズ車種である。

 

当時は、

そんな「知り合い」がいっぱいいた。

 

そんなある日。

 

そのCBRの人の事で、

変な噂を聞いたんだ。

 

そういや最近見かけないなあ・・・

と思っていたところだったから、

 

妙にその噂が気になって、

色んな人に聞いたんだけど、

 

聞く相手によって話が微妙に違う。

 

いいかげんなもんだなあ、

と思った。

 

話は大体こんな内容だった。

 

「CBRの人とその友達とで

どこかへ遊びに行ったら、

 

野犬に出くわした。

 

バイクで逃げたCBRの人は助かり、

 

走って逃げた友達の方は、

野犬に襲われて死んだ」

 

また、人によっては、

 

「両方走って逃げたけど、

 

池の方へ逃げた友達が、

野犬に追いつかれて殺された」

 

と話したりしていた。

 

話の元になったのは、

新聞の記事。

 

俺は残念ながらその新聞を見ていないから

わからないんだけど、

 

誰かが死んだのは間違いなかったみたい。

 

このあたりの話なら、

 

当時H道路に居た人であれば

聞いた事があると思う。

 

新聞を読んだ人らが話していたのは、

ただの『野犬の話』だったんだけど、

 

俺があちこちで聞いて回ってたもんだから、

しばらくすると、

 

「CBRの人の彼女から聞いた」

 

と言って、

とんでもない話をする人が出てきた。

 

その話には野犬なんか出てこない。

 

代わりに、

洒落にならないモノが出てくるんだ。

 

その話でも大概怖かったんだけど、

実はそれから数年後に、

 

偶然CBRの人と会って、

もっと確かな話を本人から聞いた。

 

これからはその時に聞いた話だ。

 

CBRの人とその彼女、

CBRの人の友達(TZRの人)とその彼女、

 

計4人で夜景を見に行こうとして、

 

二台のバイクにそれぞれ彼女を後ろに乗せて、

生駒山をウロウロしていたそうだ。

 

だけどなかなかいい場所が無くて、

いい加減ウロウロするのにも飽き、

 

たまたま見つけた

夜景なんか殆ど見えない公園で、

 

休憩してから帰ろうとなったらしい。

 

4人とも初めての公園で、

公園の名前は知らないと言っていた。

 

それは小さい公園で、

 

入ってすぐの左手にトイレがあり、

右手の奥には池がある。

 

そんな所だ。

 

深夜だし、

なんか気味が悪いなと思ったし、

 

女どもは「怖い怖い」と言っていたけど、

なにせ疲れていたから休みたかった。

 

ベンチを求めて池の横を通って

公園の奥へ歩いて行くと、

 

突然、

池の方から「ドボン!」という音。

 

池の方を見ると、

おっきい波紋ができている。

 

かなり大きな石を投げ込んだような

音だったと言っていた。

 

その池は周囲をぐるっと

フェンスで囲まれていて、

 

そのフェンスを越えるぐらいの高さまで、

 

さっきの音を出せるぐらい

大きな石を投げ上げるのは、

 

かなりの力持ちじゃないと無理。

 

と言うより、

力持ちどころか、

 

自分ら以外に誰も居ないのに、

そんな音がしたので本当にビビったという。

 

TZRの人の彼女が怖がって

しくしく泣き出し、

 

CBRの人も休憩する気が失せるぐらい

ビビっていたので、

 

もう公園から出ようという事になり、

 

入り口に戻るため、

池の横を通ろうとした瞬間、

 

また「ドボン!!」。

 

さっきより池に近かったから、

深夜で真っ暗だったけど見えたという。

 

「最悪な事に、

ソレをハッキリ見てもうた・・・」

 

と言っていた。

 

・・・すぐ近く。

 

音がした場所に広がる波紋の真ん中、

音がしてからちょっと遅れて、ぽこっと、

 

何かが顔を鼻から上だけ出したそうだ。

 

じっとこちらを見てたってさ。

 

「人間の幼稚園児みたいな顔だけど、

目がおかしなとこにあった顔が・・・」

 

目が合ったらしい、

その波紋の真ん中の顔と。

 

そこからはよく覚えて無いらしいが、

誰かが叫んで。

 

いや、俺が叫んだのかも知れない

とも言っていた。

 

あるいは、みんなが叫んだか。

 

走ってバイクの所まで戻って、

彼女が来るのを待っていたのは覚えている。

 

すごく長く感じたと言っていたけど、

時間にしてたぶん10秒も無いぐらい。

 

TZRの人はすでに彼女も後ろに乗っていて、

 

エンジンをかけようとしていたから、

余計に焦ったのかも。

 

とにかく、

気が狂いそうなほど怖かったから、

 

彼女が泣きながらノロノロ走ってくるのに、

我慢できないぐらい腹が立ったそうだ。

 

その時、

確かに聞こえていたから。

 

池の方から、

 

「ケケケケケケケケケケケケ」

 

という子供のような笑い声。

 

彼女も聞こえていたと、

後に言ってたらしい・・・

 

その笑い声。

 

しかも、

 

その時ノロノロとしか走れなかったのは、

腰が抜けていたからだとか。

 

人間って、

腰が抜けても走れるものなのか・・・

 

(続く)公園の池に潜んでいた謎の生き物 2/2

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