ある物件の入居者からの苦情
ある物件の入居者より、
苦情の電話。
隣の部屋から毎晩のように
ブツブツと声が聞こえるので、
気持ちが悪いとの事。
通常、騒音や苦情の類は
うるさいというのが殆どだが、
今回は『気持ちが悪い』だった。
件の部屋に行くと、
玄関入り口には盛り塩と御札。
盛り塩はたまにあるが、
御札は初めて。
結局は当人に会えなかったので、
手紙を置いて退散。(居留守)
後日電話にて接触でき、
話しを聞く事が出来た。
契約者は20代前半の女性(A子)で、
一人暮らし。
話しの内容は、
部屋には何か邪悪な念が
寄って来ているなど、
かなりメンヘラ気味。
※メンヘラ(はてなキーワード)
心の病気を患った人」を指すネットスラングです。 「精神疾患・精神障害を持つ人」という意味。 「メンタルヘルス」(心の健康)という言葉が匿名掲示板の2ちゃんねるなどで「メンヘル」と略されるようになり、さらにそれに -er 形がついて「メンヘラ」という言葉が生まれた。
A子「私は悪くない。
あいつらが悪い」
私「具体的にあいつらとは誰ですか?」
小1時間程じっくり話しをしても、
核心の部分では話が噛み合わない。
とにかく深夜は静かにしてくれと説得し、
本人は渋々ながら了承した。
その後、隣人に連絡して状況を聞くと、
注意後は静かになったとの事。
そんな事も忘れかけた一ヶ月程過ぎた頃、
A子さんからの家賃の入金が無い。
過去の支払い状況は、
きちんと月末には入金されていたので、
嫌な予感がした。
とりあえず部屋を見に行ってみる。
玄関扉のメール入れより、
室内のニオイを嗅いでみる。
(ヤバそうな督促訪問は必ずします)
出来れば嗅ぎたくないニオイ。
会社に戻り、
保証人に連絡するが、
電話は不通だった。
当然、本人も不通。
鍵を持ってA子さんの部屋へ。
マスクに手袋と防虫スプレー片手に、
恐る恐る入室。
入室すると、
大量のハエと強烈なニオイが襲って来た。
しかも、室内は異様でした。
室内は壁の至る所に、
御札や梵字みたいな文字などが
書かれていました。
※梵字(ぼんじ)
梵字とは、仏教の伝来と共にインドから伝わった悉曇(しったん)文字を指す。
![梵字](http://kowabananoyakata.main.jp/wp-content/uploads/2016/05/9923fd885d64a8f8fe1b88c0bde79747.jpg)
(梵字)
天井部分にも御札や文字があり、
まるで異空間。
壁は猫が引っ掻いたような傷が多数。
遺体を捜すが室内に無い。
風呂場にも無い。
トイレにも無い。
おかしいなぁと押入れを開けると、
そこにありました。
とりあえず警察に連絡。
簡単な事情聴取後に、
遺体は引き上げてもらう。
死後、約一ヶ月。
後日の警察発表によると、
死因は心臓発作らしい。
発作後に苦しくなり、
押入れに入ったんじゃないか、
との事。
外傷は無く、
事件性は無かった。
部屋の異常さから、
自殺の線でも調べたそうです。
室内には特に薬関係など無く、
状況的に自殺では無いとの事。
一ヶ月といえば、
ちょうど電話をした時期。
複雑な心境でした。
『死因は本当に心臓発作なのか』
『なぜ押入れに入ったのか』
今では何も分かりませんが、
ただ・・・
押し入れの襖が両方きちんと
閉められていたのが、
最大の謎となりました。
(終)