お祓いの真似事をしていたら
これは、実家がお寺の前田さんの話。※仮名
商売柄か、小さい頃から不思議な体験も多かったらしい。
「今は実家を出ちゃって、お寺はアニキに任せてるんだけどね」
女子高に通っていた頃、家がお寺という異色なキャラの彼女にはその手の相談が多かった。
お寺にある御札を使って、勝手にお祓いのような真似事をしていたという。
お祓いの仕方など当然知らない彼女のやり方は、怖い体験をしたという相談を受けた時に、御札を渡して以下のように言うだけだった。
「その場所にこの御札を持って行って自分の名前を書いて来て。そしたら私が預かるから」
1枚千円で、ちゃっかりとバイト代も稼いでいた。
それは修学旅行の時だった。
当然のように夜になると前田さんに相談する人が部屋に集まって来る。
その時は、イタズラ半分で肝試しに行ったという仲良しグループ4人の相談だった。
親身に相談に乗ってあげ、持って来ていた御札を渡す。
違う学校に通っているという人の分も含めて“5人分”。
「一晩で5千円でしょ。良いバイトよね。彼女たちも安心だし」
修学旅行から帰って次の日曜には、5枚の御札が手元に戻って来た。
彼女なりに供養と称して、御札はお寺の裏にある焼却炉に入れて燃やしていたそうで。
そんなある晩のこと。
洗濯をしながら部屋で漫画を読んでいた前田さんは、洗濯機のガタガタという大きな音を耳にした。
「よく洗濯機に一杯詰め込みすぎちゃうとガタガタって振動するでしょ?ドラムが回らなくなっちゃって」
溜まっていた洗濯物を一度で洗おうとちょっと詰め込みすぎたかなと思いながら、庭にある洗濯機のフタを開けた。
その中には”生首が5つ”入っていた。
「ぎゃっ!!!」
悲鳴を上げ、急いで両親を呼びに行った。
再び両親と洗濯機の中を覗くと、生首は消えていた。
どうやら前田さんは、修学旅行時の5人分の御札をポケットに入れたまま洗濯してしまったのだと。
両親にバレた前田さんは、当然ながら相当怒られた。
以降、供養のバイトはやめたという。
(終)