探せども探せども見つからない神社
かなり昔の話になる。
家の裏手にある山の中の獣道を辿って行くと、
人里離れた神社があった。
いかにも寂れたという感じの神社で、
建物はボロボロで賽銭箱も無く、
そもそも扉一つすら無かった。
周囲は鬱蒼と茂った森のため、
夏でも涼しく、
いつだって異様なほど静かだった。
テスト勉強なんかをする時は、
そこまで折り畳みの机を運んで行っていた。
山の中で起きた不思議な事とは・・・
高校二年の秋、
いつものように落ち着きたくて
その神社に入ると、
お堂の奥に“白い何か”が居た。
近寄ってよく見てみると、
“真っ白い人間のような犬・・・”
としか表現出来ない何かが居た。
きっと珍しい動物だろうから、
家に帰ったら調べてみようと思って
携帯を開いた瞬間・・・
そいつは口を大きく開いた。
そして、「キュー・・キュー・・」と、
そんな感じに鳴き始めた。
甲高いというか、
頭に突き刺さるような嫌な声だったので、
聞こえなくなる場所まで慌てて逃げたのだが、
それでも気になって神社に戻ろうとした。
ところが・・・
いつものように通っていた獣道が、
まったく見つからない。
探せども探せども、
獣道どころか山の中を探し回っても、
そんな神社は見つからなかった。
家族や知人に訊いてみたが、
幼稚園時代からの友達の一人以外は、
その神社の存在すら知らなかった。
それからもあの場所を探すことを諦めきれず、
置きっぱなしの机や他の荷物の回収に
何度も足を運んだけれど、
数年経った今でも見つけられていない。
ただ・・・
山を歩いている最中に一度だけ、
遠くの木の上にいる“白い何か”を
見かけたことはある。
もしかすると・・・あの神社は、
そいつの居場所だったのかも知れない。
(終)