過去の記憶を失っていた女の子 2/2

山小屋

前回までの話はこちら

私は山の中を走っていました。

 

何かに追われているのか、

後ろを気にしながら走っていました。

 

目が覚めた時、

彼女が横に立っていました。

 

「何処へ行ってたの?

携帯繋がらなかったけど」

 

「昨日の山の小屋に行ってた」

 

「また?なんで?

勝手に行かないでよ・・・」

 

「ごめんなさい。

 

でも何か、

行かなきゃならない感じがしたの」

 

「それで、何か思い出した?」

 

「うん・・・

 

あの小屋に私、

家族と居たんだと思う。

 

それだけ・・・

思い出したのは」

 

「そっか・・・

一度警察に訊いた方が良いんじゃないのかな?

 

燃えてたみたいだし、

何か知ってるかも」

 

「それだけは嫌!!

絶対言わないで!!」

 

一瞬、彼女の顔ではないものが

見えたような気がしました。

 

「ごめんなさい。

もう黙って何処かに行ったりしないよ・・・」

 

その日は二人とも寝ました。

 

それから数日が経ったのですが、

日が経つにつれ彼女は痩せていきました。

 

私は彼女にバイトをしばらく休ませました。

 

大学の講義が終わってすぐ、

彼女から携帯に電話が掛かってきました。

 

「どうしたの?」

 

彼女は泣いていました。

 

「すぐ帰るから待ってて」

 

私はそう言い、

急いで家に帰りました。

 

彼女は帰ってもまだ泣いていました。

 

「あの小屋で倒れてた人達ね・・・

なんで倒れたのか分かったの・・・

 

部屋の中は真っ赤に染まってて・・・」

 

私はそれ以上聞きたくなかったので、

彼女をやさしく抱きしめました。

 

その日の夜、

 

私はなかなか寝付けなかったので

起きていたのですが、

 

突然彼女がまた起きました。

 

私は声をかけようと思ったのですが、

横顔を見てやめました。

 

私は早く寝よう寝ようと思い、

ようやく眠りにつきました。

 

そして朝起きると、

手紙が置いてありました。

 

******************************

おはよう

山に行きたくなったので山に行きます

良かったら来てください

待ってます

******************************

 

私は何も考えられず、

ただ山へ向かうために進んでいました。

 

山に着いた時には、

もう日が暮れていました。

 

もう暗いのに山に居るのかな・・・

ずっと山に居るのかな・・・

 

私は近くの宿に行き、

 

女の子が近くを歩いていなかったか?

などを訊きましたが、

 

そのような女の子は見ていないようでした。

 

真っ暗な山道。

 

先が見えない山道。

 

何が起こるか分からない山道。

 

私は足を進められず、

 

彼女には悪いと思いながら、

その日は宿に泊まりました。

 

そして朝起きると、

 

不思議な顔をした女将さんが

何かを持ってきました。

 

切手が貼られていて、

 

私の泊まっている宿の部屋番号が

書かれていた封筒でした。

 

************

山に来てよ

お願い

待ってるよ

************

 

名前は書かれていませんでしたが、

誰が書いたものか分かりました。

 

私は山に向かいました。

 

太陽が昇っているのに、

山は薄暗かったです。

 

私は小屋まで進みました。

 

小屋の中には手紙がありました。

 

****************************

来てくれてありがとう

もう私いなくなっちゃたんだ

ずっと一緒にいられなくてごめんね

****************************

 

私は意味が分からず立っていると、

後ろから何か堅いもので頭を殴られました。

 

私は倒れ、

後ろを見ました。

 

「は?なんで・・・?」

 

彼女が木の棒を持って立っていました。

 

「私、全部思い出したんだ~

教えてあげる。特別だよ?」

 

以前の彼女なのか、

声も顔も別人のようでした。

 

大人っぽい声だったのに、

子供のような声でした。

 

「まず、ある人を追いかけていた

ことから教えるね。

 

私、その人に振られたんだ~

でね、私、殺しちゃったんだ。

 

そいつ、私に脅えながら

何回も謝って逃げ回ったんだよ?

 

バカだよね~

逃げられるわけないのにね」

 

私は何とか立ち上がろうとしましたが、

彼女に簡単に倒されました。

 

「まだお話終わってないよ。

 

私、家族が嫌いだったんだ~

妹がいてさぁ、

 

おとうもおかあも妹のことばっかり

可愛がるんだもん。

 

つまんないでしょ?

だからこの小屋で殺しちゃった。

 

簡単に死んじゃったよ~

 

あの男みたいにもっと逃げ回ってくれたら

面白かったんだけどね。

 

さ、お話は終わり。

君は頑張ってくれるよね?」

 

そう言いながら彼女は棒を高く上げ、

私に向かって振ってきました。

 

私は手でそれを受け彼女を突き飛ばし、

山の中に逃げました。

 

山を降りよう。

 

早く降りれば助かる。

 

私は無我夢中で走りました。

 

もうすぐだ。

 

私はそう思いながら後ろを見ました。

 

後ろに彼女の姿はありませんでした。

 

が、何故か彼女は前に居ました。

 

私は急いで静止しました。

 

「この山の道には詳しいんだ。

お疲れさ~ん」

 

私は頭を殴られ、

倒れました。

 

倒れてからも彼女は、

何度も何度も私を殴りました。

 

気付いた時には病院に居ました。

 

山の中で倒れていたそうです。

 

彼女の姿は無かったようでした。

 

退院して数ヶ月が経ち、

 

以前の彼女が居ない日々に

少しずつ戻っていきました。

 

彼女はあの日から、

私の前には現れませんでした。

 

もしかすると彼女は今再び記憶を失っていて、

何処かの病院に居るのだろうか。

 

それとも罪を償おうとしているのか。

 

それともあの山をまだ彷徨っているのだろうか。

 

私は彼女の私物を片付けながら、

色んなことを考えていました。

 

そして、

何故か涙が止まりませんでした。

 

(終)

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One Response to “過去の記憶を失っていた女の子 2/2”

  1. 名無し より:

    これ前にも読んだけど
    やっぱ怖い。

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