学校で流行った『アサン様』という占い
私が小学6年生の頃、『アサン様』という占いが学校で流行りました。
その占いの方法とは・・・
夜中、自分以外の家族全員が寝ているか外出している時に、占いのターゲットとなる複数の名前を書いた紙の上で、抜いた髪の毛の先に五円玉を結んだものを指でつまんでぶら下げ、「アサン様お嫁入り」と二度唱えます。
その後に知りたいことを質問(「私のことを好きな人は誰?」とか)をすると、その人物の名前の上で五円玉が大きく振れ、教えてくれるという占いでした。
簡単に言えば、こっくりさんに似た『振り子のダウジング』です。
でも、アサン様はこっくりさんと違って、怖くて危ないものという感覚ではなかったのです。
クラスの女子は、みんな気軽にアサン様で遊んでいました。
その中でも、江川さん(仮名)は占いやおまじないが大好きで、毎晩のようにアサン様をやっていたそうです。
・・・が、ある日、彼女は私たちに、「やり方を間違えたからもうアサン様が出来なくなった」と言い出しました。
アサン様をやりすぎたせいで・・・
本来、アサン様に使った髪の毛は、必ず燃やさなくてはいけないし、五円玉は手放さなくてはならないのですが、江川さんは髪の毛と五円玉をそのまま使い続けていたそうです。
そのせいか、アサン様を始めると五円玉が常に激しく振れ続け、占いにならないのだとか。
それからでした。
江川さんの様子がおかしくなり始めたのは・・・。
いつも怯えているような態度だったり、そうかと思えば授業中に居眠りをしたり。
江川さんと仲の良かった私たち数人のグループは、彼女を心配して、学校では出来るだけ誰かが傍にいるようにしたり、放課後もなかなか家に帰りたがらない江川さんを、夕方まで自分の部屋で一緒に居てあげるようにしていました。
ですが、江川さんがグループの松田さん(仮名)の部屋に行ったある日、江川さんは松田さんにこんなことを言ったそうです。
「アサン様が私の部屋を覗きに来る。ひょろひょろで歯がボロボロで怖い」
私たちはみんな、アサン様は可愛い女の子の妖精みたいなものだと思っていたので、松田さんはビックリして訊くと、「違う!」と江川さんは怒ります。
江川さんが言うには、アサン様は背が高く、細身でニヤニヤ笑う若い男の姿なのだとか。
さらには、「みんながアサン様をやらなくなったから私から離れていかない」と泣き始め、「お願いだから今晩アサン様をやって!」と松田さんに懇願したそうです。
確かにみんな、江川さんの様子がおかしくなったのはアサン様のやりすぎのせいでは・・・と感じていたので、その頃にはもうアサン様をやる人はいなくなっていました。
松田さんが返事を出来ずにいると、江川さんは怒って松田さんの部屋で突然暴れ出したそうです。
幸い、その叫び声を聞いた松田さんの母親がすぐ止めに入り、江川さんは家に帰されました。
そしてそれから卒業までの数ヶ月、江川さんが学校に出て来ることはなく、卒業と同時にどこか他所の土地に引っ越したと聞きました。
私はアサン様を信じてはいませんでしたが、人気者だった江川さんの変わり様と突然居なくなってしまったという現実が、当時とても怖かったです。
(終)