子供をさらう尻切れ馬の話 2/2
実家の近所には神社があります。
こういうものを相談するのは神社なのか寺なのかよく分かりませんでしたが、調べてみると『お祓い』は神社でするようなので、とりあえずこの件をダメ元で相談してみることにしました。
社務所を訪ね、神主さんに事情を説明すると、不思議そうな様子でした。
神主さん曰く、「その馬のことは知っているが、貴方に目を付けた上に家まで付いてくるのはおかしい」とのことでした。
しかし体験したことは事実なので、どうにかならないか?と聞くと、「それならひとまずお祓いしておきましょうか」と、あっさりとそう言われてびっくりしました。
少し時間がかかるが問題ありませんか?と言われて大丈夫だと答えると、神社の賽銭箱の奥にある、イスの沢山置いてある場所まで案内されました。
初詣の際に、よくその場所で幣(ぬさ)を振っている神主さんを見かけた覚えがありました。
調べてみると、厄年の厄払いをする場所のようです。
お祓いにはそれほど時間がかかりませんでした。
何かを唱えながら私の前で幣を振っていたような感じでしたが、こういったことに詳しくないので何を言っていたのか等は分かりません。
「終わりましたよ」と神主さんが言っても実感が湧かず、え?と間抜けた返事をしてしまいました。
お祓いが終わり、社務所でお茶を出していただきながら、馬のことについて聞いてみました。
すると、「貴方の見たそれは『尻切れ馬』というものです」と。
その名前には聞き覚えがありました。
詳しい内容は覚えていませんが、小学校の文化祭での発表でその名前を聞いた記憶があります。
神主さんが言うには、尻切れ馬は「夜遅くまで遊んでいる幼い子供を追いかけ、攫(さら)ってしまう存在」だそうです。
話を聞く限り、子供が早く家に帰ってくるよう親が創作し、語ったもののように思えました。
神社には、『尻切れ馬に目を付けられた子供がいたら、尻切れ馬にお願いして攫わないでおいてもらいなさい』といった話が伝えられているそうで、先ほどのお祓いも実質『お願い』だったそうです。
幽霊や呪いの類ではなく神様のようなものなので、『お願い』でないと聞き入れてもらえないそうです。
神主さんが知っているのはその辺りまでで、これ以上のことは知らないようでした。
その後は特に異変はありません。
在学中には毎年実家に帰省していましたが、それ以降は尻切れ馬に遭遇したことはありません。
結局、幼い子供ではない自分がなぜ出会ったのか?なぜ家まで付いて来たのか?何が目的だったのか?といったことは分かりませんでした。
終わってみればそう怖くない話ですが、夜中は絶対にカーテンを開かないようにしています。
太鼓の音が聞こえなくとも、カーテンを開けると尻切れ馬がいるのではないかと思えてならないのです。
ちなみに、場所は愛媛県です。
四国地方では似たような話がいくつもあるのかもしれません。
(終)
精神年齢が幼…じゃなくて、夜に出歩いていたからじゃね?