人の命を喰らう魔物がいた場所

鳥居

 

これは、姉の体験話。

 

夜、街灯もない田舎道を車で走っている時、あまりに星が綺麗だったので路肩に停車して車から降り、ライトも消してぼんやりと空を見上げていたそうだ。

 

すると急に、腕に痛みを感じて車に戻って見てみると、斜めに切り傷が出来ており、出血している。

 

しかも二箇所も。

 

動物に襲われたわけでも通り魔に遭遇したわけでもなく、姉はビックリして傷の手当てもろくにせず、慌てて帰宅した。

 

それから数ヶ月。

 

田舎道は徐々に整備され、一部の砂利道を除けば随分と綺麗になっていた。

 

しかし道が綺麗になった弊害か、肝試しやドリフト走行する不良が増えることに。

 

そして、やはり事件は起きた。

 

ワゴン車に乗った不良数人が事故り、複数の若者が亡くなる惨事に。

 

そこは姉の腕がスッパリ切られた場所でもあった。

 

後日、付近に住む農家の方々からこんな昔話を聞いた。

 

その場所には古い民話が伝わっており、人喰いの恐ろしい魔物がいて、毎晩人の命を奪っていたそう。

 

そこで村長が救いを求めて祈ったところ、その魔物は地面に突如現れた沼に呑み込まれていったという。

 

しかし時々暴れてカマイタチみたいな現象を起こしたり、木をへし折ったり、田んぼの堤を破壊したりする。

 

それらを防ぐため神社を建立したところ、比較的トラブルが減ったそう。

 

姉が腕の傷痕を見せてみると、「それで済んで良かった。事故った子らは喰われたんだからねえ」と笑顔で言われたという。

 

数年経っても姉の傷痕は残ったまま。

 

まだ時々疼くそうだ。

 

(終)

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