集金に伺った家で不可解な体験
これは、新聞配達をしている私の不可解な体験談です。
集金に行ったその家は、オートロックタイプのワンルームマンションでした。
私は玄関ホールから呼び出しチャイムを鳴らしました。
鳴らしてしばらく経ち、「・・・はい」と男性の声がしました。
寝起きなのか、ひどくテンションの低い声でした。
集金に来たことを告げると、黙ってオートロックのドアが開きました。
部屋の中には・・・
エレベータで目的の部屋へ行き、玄関のチャイムを押しました。
チャイムの後に少しの間があり、カチャリと鍵を開く音がしてドアが少しだけ開きました。
・・・が、いくら待っても人が出てこないのです。
仕方がないので、私はドアを引いてみました。
やっぱり玄関には誰もいません。
「すいませーん。○○新聞の者ですー」
声をかけましたが、反応がありません。
何度声をかけてもチャイムを鳴らしても、反応がありません。
奥の部屋からは、テレビの音が聞こえています。
人がいるのは分かっているので、「上がらせてもらいますよー」と言いながら、靴を脱いで上がり込みました。
居間のドアを開けると、やはりテレビがついていました。
けれども、部屋には誰もいません。
念の為にと、トイレ兼シャワーも音を確認してから開けてみましたが、誰もいません。
さすがに気味が悪くなってきたのですが、開き直って押入まで確認しました。
結局、人がいないので諦めて帰ることにしました。
無人の家なので、余計な事とは思いましたがテレビは消しておきました。
鍵はかけられないのでそのままです。
玄関を出て、ドアを閉めて、エレベータへ向かいかけたのですが、気が変わって引き返しました。
最後の確認の為、ドアを引いてみました。
ですが、鍵がかかっていました。
ホテルのドアと同じようなものでしょうか。
誰もいないのは分かっていましたが、ついチャイムを押してみました。
ガチャリ。
音がして、ドアが開き始めました。
今度はすかさずドアを掴み、自分で開きました。
しかし、そこには誰もいませんでした。
私は全身に鳥肌が立ち、猛烈な寒気に襲われ、階段を駆け下りてマンションから飛び出しました。
店長にこの出来事を話しましたが、「勝手に家に上がるな!」と怒られただけでした。
その後、他のバイトがその家に行ってみたようですが、最初から何の応答もなかったそうです。
仕方がないのでその家への新聞の配達は止めて、後は店長に措置を任せました。
問題の部屋はすぐに空き部屋になったようですが、その後ずっと人が入ることはありませんでした。
(終)