あったはずの血のシミが消えていた
私が東京での一人暮らしを始めて2年目の春の出来事です。
春休みを利用して帰省していたのですが、帰省して3日ほど経った日の夜、住んでいたアパートの管理会社から電話がありました。
管「部屋の窓ガラスを割った覚えはありませんか?」
私「は?」
管「いえ、○○さんの部屋の窓ガラスが割れているんですよ」
どうやら私の部屋の窓ガラスが割れているようで、それに気付いた隣の部屋の住人が管理会社に連絡してくれたとのことでした。
空き巣に入られたことより何より・・・
もちろん自分の部屋の窓ガラスを割るわけなどなく、その時に頭を過ぎったのは『空き巣』の3文字。
ちなみに、私の部屋は3階建ての1階。
駅からは近く人通りも少なくないのですが、空き巣が周りの目を気にせずに侵入するのは容易・・・という、防犯面ではあまりよろしくないアパートでした。
その日はアパートに帰ることが出来なかったので、管理会社と警察に任せて部屋の様子を見ておいてもらうことにしました。(簡単な現場検証をすると言っていた)
翌日、帰宅して警察に連絡。
私自身がパッと見た感じでは酷く荒らされたところはなく、部屋にあった化粧ポーチの中を開けられたり、テレビ台の辺りに置いてあった物が押し退けられた程度だったと記憶しています。
警察の人が来ると、指紋採取や事情聴取のようなことを行いました。
その時に、前日撮った現場(私の部屋)の写真を一緒に見ながら確認してほしいと言われ、割れた窓ガラスや足跡のような汚れが付いているカーペットの写真などを実際のものと並べながら確認しました。
警A「あれ?おかしいなぁ」
警B「どうした?」
警A「これ、このシミがなくなってんだよ」
警B「あぁ、これ?本当だ。なくなってるな」
私の部屋のカーテンと一枚の写真とを交互に見ながら、二人の警官がそんなことを話しています。
どうしたのかな?と思いながら二人の様子を見ていると、そのうちの一人に声をかけられました。
警A「すいません。ちょっとコレ見てくれます?」
見せられたのは一枚の写真。
私の部屋のカーテンの一部を写したものでした。
その写真の中央には赤茶色のシミがあり、どうやら血痕らしいということが私にも分かりました。
警A「昨日ね、このシミに気付いて写真を撮っておいたんですよ」
警B「多分、空き巣が窓ガラスを割った時に怪我をして付いた血だと思うんですよね」
警A「そうそう。それでシミがあるのがカーテンのこの辺りっていうのもメモしておいたんですけど、それを今確認してもらおうとしたら・・・ないんですよね」
そんなことがあるのかと思いながら、カーテンを隅々まで確認する私。
しかし、どんなに探しても写真に写っているようなシミなどなく、「ない・・・ですねぇ」と一言。
私が確認している間も、警察の人達は「昨日見た時は簡単に落ちるようなシミじゃなかったよな」とか、「管理会社の人も取り替えるとか言ってなかったしなぁ」なんて言っているのです。
私は空き巣に入られたことより何より、“昨日はくっきりとあったシミが全く何の痕跡もないまま消えた”ことの方に恐怖してしまいました。
結局、盗られた物がないので不法侵入云々の届けを出し、管理会社が手配してくれた修理会社に窓ガラスを直してもらい、この一件は幕を閉じました。
さすがにその日は一人で部屋に居たくなかったのですが、仲の良い友達が皆帰省してしまっていた為、仕方なく部屋の電気を点けっ放しで何人かの友達に電話をかけまくって夜を明かしました。
その後も同じ部屋で暮らすことになるのですが、金縛りはあったものの心霊現象などは特になく健康に過ごしました。
(終)