「こんなん撮ったっけ?」
これは10年ほど前に体験した、ほんのり怖かった話。
家族4人でキャンプに行った時のこと。
場所は群馬県かその辺り、関東より北方面の河原だったように覚えている。
河原には、自分たち以外に人の姿はなかった。
そこでは特に何があったわけでもないので割愛する。
帰りの途で、キャンプ中に使用していた使い捨てカメラを現像に出した。
後日、出来上がった写真を家で見ていると、姉が首を傾げながら一枚の写真を俺に投げ渡してこう言う。
「これさぁ、こんなん撮ったっけ?」
見た感じでは、特にこれといった写真ではない。
家族4人が寝袋に包まり、中央の父が半身を出してランタンの火を調節している写真だった。
「さぁ?撮ったんだろ」
「ええー・・・・」
姉は納得いかぬという風に、眉をしかめていた。
そして「撮ってないよ」と言う。
「だって撮ってあるじゃん。何?何なの?」
「あのさぁ、4人写ってんのよ?誰が撮るのよ?4人で行ったのに4人写ってんのよ、これ」
姉の言い分に、今度は俺が納得いかなかった。
姉の言っていることは理解できるし、それが不思議なこともわかる。
だが、実際にこうして手元に写真があるもんだから、なんとなく釈然としないものがあった。
その時、姉はネガフィルムを手にして光に透かした。
「どれ?」
「一番最後の・・・」
「ないよ?」
ネガフィルムには、その像は写っていなかった。
それに、ネガフィルム上では36枚全てが埋まっていた。
つまり、あれは“一枚余分な写真”だったのだ。
じっとその不思議な写真を眺めていると、ふと気づいた。
その写真は寝ている自分たちを撮っている。
それも真上から。
すなわち、俯瞰で撮られている写真だった。
姉は「うーん」と唸ってから、その写真をどこかへ持っていってしまった。
結局、どうにかしてその写真を処理したようだが、それについては知らない。
(終)