私の後ろを付いて来ていた白い猫
これは、ある夏の日の不思議な体験談。
コンビニへ行き、アイスを食べながら家に向かっていると、後ろから常に一定の距離を保ちながら付いてくる『白い猫』がいた。
私が歩くと猫も歩く、私が振り返ると猫は止まる、そんな感じに。
とても暑い日だったので、家に着いて水撒きをして、外にある水道から庭作り用のバケツに水を入れておいたら、庭先の日陰でその猫が水を飲んでいた。
それを見て、お腹空いてるのかな?とぼんやり考えていた。
次に気づいた時、私は病院のベッドで寝ていた。
母が言うには、庭で倒れた拍子に敷石で後頭部を打ち、10日間も意識不明になっていたそうで。
脳に溜まった血液を抜き、手術をしたと先生から説明を受けた。
その後も検査をしたり、テストのようなもの(家族の顔がわかるかとか)とリハビリをして退院した。
でも帰宅してみたら、一つだけ記憶がおかしい。
あの時に私に付いてきた白い猫は家で暮らしていて、それも3年も前からウチの猫だと言われ、私は軽いパニックになった。
あれから飼い猫にしたわけではなく、部屋には猫のお昼寝用ベッドや玩具、トイレなどが置いてあり、白い猫は私にもよく懐いていた。
父が、「タマ(猫)が鳴いてお前が倒れたのを教えてくれたんだよ。命の恩人だな」と言った。
私の記憶では、バケツの水へ身を乗り出してぺったぺったと飲んでいる野良の白い猫のみで、3年暮らしたはずの猫の記憶だけが全くない。
私の記憶違いかもしれないが、猫は10才になっても毛並みも変わらずあの時のままで、病院でも「年のわりには健康だし、目やにもないし、毛並みもいいね。びっくりです」と言われた。
でも私は、この子は只の白い猫ではないのでは?とずっと疑っている。
(終)