深夜の裏通りで遭遇してしまったもの
これは、つい先日に体験した話。
飲み会の帰り道、ほろ酔い気分で駅から歩いていた。
深夜の午前1時前くらいだったろうか。
夜も遅かったこともあり、近道をしようと裏通りに入った。
裏通りと言っても、なんてことない住宅街だ。
まだ部屋の灯りがついている家も、ぽつぽつとある。
その灯りと街灯を頼りに歩いていると、とあるマンションの前に”何か”が立っていた。
遠目からだが、人のシルエットのようにも見える。
近付くにつれて、それは人間だと確信した。
でもソレは微動だにしない。
突っ立ったまんまだ。
いきなり刺してきたりしないだろうな…と少し不安になったが、引き返すと遠回りになるし、やはり早く家に帰りたかった。
絶対に目を合わさないようにしてソレの前に差し掛かった時、やっとわかった。
ソレは人間ではなく、女物の着物を着たマネキンだった。
何でこんな所にマネキンが?
気味悪っ…。
そう思いながら、足早に通り過ぎた。
しばらく歩いていると、ふと横に気配を感じた。
ん?と思って横を見る。
すると、さっきのマネキンがすぐ真横にいる!!
いや、よく見ればマネキンではない。
どう見ても人肌をしている。
顔はマネキンのように無表情で、目が真っ暗の女だ。
コイツ、どこから来た?
いきなり隣に現れたとしか思えない。
それに、どう見ても生身の人間ではない。
そんな考えが感覚的に1秒くらいで脳内を駆け巡り、次の瞬間には全身が総毛立って全速力で逃げた。
今後、もうあの道だけは絶対に通りたくない。
しかし、あれは何だったのだろうか。
私は完全に酔っていたのだろうか。
(終)