これは誰の葬式ですか?
これは、デジャヴや予知のような不思議な話です。
東さんが馬場さんの家で一緒に飲んでいて、帰りがすっかり遅くなってしまった時のことです。※仮名
夜道を歩いていると、向こうから何やら行列が見えました。
その行列の人たちは喪服を着ており、一目で葬式だということがわかったと。
東さんは、はて?この近所で誰か亡くなったのかな?と思い、お酒も入っていたこともあってか行列の一人に聞いてみたそうです。
「これは誰の葬式ですか?」
「その先の家の東さんのです」
なんと、我が家の葬式だと言うのです。
驚いた東さんは振り返ると、さっきまであった行列はありませんでした。
怖くなった東さんは、駆け足で家に帰ったそうです。
しかし家に帰ると、奥さんや子供の姿がどこにも見当たりません。
途方に暮れた東さんは仕方なく、さっきまで一緒に飲んでいた馬場さんの家まで戻ることに。
馬場さんの家に着くと、東さんはこの奇妙な出来事を伝えました。
すると馬場さんは、「お前、飲みすぎなんだよ。今お前の家に電話するから」と、東さんの家に電話をしたそうです。
電話口からは、東さんの奥さんの声が聞こえてきました。
「ほらな?普通に家にいるだろ?」
馬場さんはそう言うと、東さんの家まで一緒に行ったそうです。
今度は東さんの家族はいました。
東さんは、これは夢でも見たのだ、と思ったそうです。
しかしそれから数日後、東さんは交通事故で亡くなりました。
葬式をしている最中、馬場さんは数日前に東さんが言っていた奇妙な出来事を思い出していました。
そして馬場さんは、アイツは自分の死を予言していたのではないか?と思ったそうです。
やがて葬式も終わり、参列者で棺を霊柩車に運んでいる時でした。
馬場さんの後ろで、こんな会話が聞こえてきました。
「これは誰の葬式ですか?」
「その先の家の東さんのです」
馬場さんは、ハッとしました。
今の声は間違いなく東さんの声でした。
馬場さんは後ろで会話をしていた人に聞きました。
「今さっき喋っていた人はどこに行きました?」
すると、「ええっと、その先の東さんの家に走って行きましたよ。でも妙だなぁ?その人、何というか黒いものを覆い被さった感じで顔がよく見えてなかったんですよ」と。
馬場さんは急いで東さんの家へ向かいましたが、そこには誰もいませんでした。
アイツが見た行列というのはこれのことだったのか…。
馬場さんはそう思ったそうです。
(終)