呪われた第二の秘密基地 1/2
ガキの頃に親父の田舎で起こった話。
俺の親父の実家は、よく言えば自然に囲まれた農村、悪く言えばド田舎。
マムシは出るわ、見たことのない熊が出るわで、夏休みに遊びに行く時は色んな意味で自然というものを教えてもらった。
今から話すのは、俺が小学校3年の時の夏休みの出来事。
お盆の時期に祖父母の家へ家族で1週間ほど過ごしに行った。
年上の従兄弟(兄A・弟B)二人と、朝から日が暮れるまで遊びまわり、家に帰る日が近づく頃には真っ黒に日焼けするぐらいになっていた。
そして家に帰る前日になると、あれだけ遊びまくったはずなのにまだまだ遊び足りない俺は、帰る前にAとBの二人に「もっと楽しい所はないか?」と訊いた。
そうしてAの提案で『第二の秘密基地』という所へ行くことになった。
これから始まる恐ろしい体験
第二の秘密基地という場所は、山に少し入ったところにある宗教団体が建てたらしい建物で、敷地を囲む金網があるが入口の扉の鎖が緩んでいて、子供なら簡単に入れる状態だった。
人気が無く荒れ放題で、ボロボロの金網に囲まれた敷地内は雑草に覆われており、駐車場や通路はアスファルト舗装されているが、落ち葉でほとんど路面は見えなかった。
平屋コンクリ造りの建物は所々白い塗装が剥げ落ちていて、ドアや窓は雨戸で締め切られ、おそらく一つ一つに南京錠が掛けられていた。
A達が出入りしている建物の入口は、倒木で戸板が割れている裏口。
俺はA達の後に付いて入ってみると、中は直ぐに小さな集会場のような部屋になっていて、山形に取り付けられた天窓があり、そこから入る光りで明るかった。
部屋には横長の祭壇と男性器の形をした御神体らしきものがあり、俺はアホな子供らしくそれを見てゲラゲラ笑っていた。
さらには御神体を振り回したり、投げたり、石投げの的にするなどの罰当たりな事をしたりと・・・。
建物内を探検して色々遊んだが、いい加減に日も傾いて暗くなってきたので、「帰ろう」という事になった。
入った時と同じようにAを先頭に建物から出た時、Aが突然「下向け! 顔を絶対に上げるな!」と怒鳴った。
え? と思ったが、言われるままAの足元を見ながら建物の敷地を抜けようとすると、途中で誰かにすれ違った。
そいつを一言で表現するなら『青』。
俺はそいつの足しか見てないが、老人の裸足で色が不自然な青の濃淡だけで見えていた。
昔は五百円札みたいだと思ったが、今なら千円札の夏目漱石があの色合いのまま突っ立っているような感じだった。
俺はそんな奴が近くに立っていると思ったら恐ろしくなってきて、出来るだけAとBにくっ付いて歩いた。
Aは「○○さん助けて下さい」みたいな事を、呪文のように繰り返し呟いている。
俺とBは半べそで兄貴にくっ付いている感じで、ただココから出たいだけだった。
三人で早歩きになりながら、敷地の出入り口に向かうアスファルトの通路に出た。
俺は出口が近いと思ったら走り出したくなり、少し顔を上げたら後ろ姿のAに「あと二人いる!頭下げろ!」と怒鳴られた。
見ないで俺が顔を上げた事に気付いたAに驚いたが、Aの声の感じがいつもとは全く違うといった状況に、ビビって直ぐに下を向いた。
しばらく歩くと金網が揺すられる音がして、Aが出入り口の隙間から出ようとしているようだった。
見えるAの足が尋常じゃないくらい震えていた。
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