神仏に祈った「彼女の望み」とは
これは、知人の話。
ある女性と付き合うことになり、信仰している神仏にご報告に行ったそうな。
お社に一緒にお参りし、相手が真摯な態度で祈っているさまにホッとし、後から「あの時、何をお祈りしていたの?」と尋ねた。
しかし、返ってきたのは微笑みだけだった。
あなたに大したことがなくて良かった
それきり追求できなかったある日のこと。
知人はオフロードバイクで思いっきり山の空を飛んだ。
途中、通りかかった車に助けを求めたが、彼の格好を見た途端に開きかけた窓が閉まり、急発進して逃げるように去って行った。
頭から出血はあったものの、包帯を巻いて仕事に行ける程度の怪我だった。
同じ日、同じ頃、相手の女性も怪我をした。
こちらは緊急入院になる程の首の怪我。
お見舞いに行くと、絶対安静で起き上がれない状態で、話をしているうちにお参りに行った時のことになった。
知人は、「あの時、本当は何をお祈りしたの?」と何気なく尋ねた。
女性は、「うーん、今なら言ってもいいかなあ」と前置きし、話し始めた。
「あなたに何かあるのなら、まず私にそのトラブル全てを寄越して下さいってお願いしたの。私、『事故にはよく遭うだろうけど絶対長生きする』って色んな時に色んな人に言われてたからね。頑丈に出来ているみたいよ。うん、あなたに大したことがなくて良かった」とニッコリ。
「神仏のバチとか、お叱りとか、メッセージって主に首から上に出るんだよな。ベゼルのフロントが滅茶苦茶になって廃車しかない事故で、今こうして無事だったのも、彼女の望みが叶えられたってことなんだよな。あの状態で笑えるってのはかなり強いよ」
そう、しみじみと彼は私に告げた。
幸い女性は、それほど大きな後遺症も残らず、今も彼の傍で微笑んでいる。
皆様も、首から上の怪我にはお気をつけ下さい。
(終)
通りがかった車はなぜ逃げたのか…?