鉄道の人身事故にまつわる現場の話
私が関西にいた頃、行きつけの飲み屋さんで某大手私鉄の運転手さんと仲良くなった。
これは、その人(以下、岡田さんとする)から聞いた話である。
列車には、車と同じように車両毎に異なった番号が付けられる。
関西では4桁が基本らしく、古いものから1000→2000→3000とタイプ別に付けられるらしい。
これが俗にいう『○○系』というものだ。
そしてさらに、ある決まりがあるという。
縁起担ぎ
その決まりとは、3000の次は5000になるということだ。
私は冗談めかしに「4(死)の番号を避けてる?」と聞いたら、岡田さんの返答は「その通り」だった。
そして、「人の命を預かってるからね」と付け加えた。
科学や技術が進んだ現代でも、『縁起担ぎ』があるのだと私は思った。
ただ、それ以外では「4も使う」とのことだった。
岡田さんはそれなりにベテランで、人身事故等の遭遇も経験している。
曰く、人がホームから飛び込む時は、「エイッ」とジャンプして来るものではないという。
そして、通過する駅でスピードを出していても、事故に遭いそうな時は何か違和感があるらしい。
飛び込もうとしている人を何かが招いているといった感じだ、と言っていた。
ふわっと何かに引き寄せられるように落ちて来るという。
遺体の処理については、警察は来ても触らず、鉄道会社の職員が行うそうだ。
処理方法も聞いたが、ここで書くのは控える。
遺体の搬送が終わると、列車を車庫へ入れる。
事故車は直ちに検査を受け、必要に応じて修理や部品交換が施され、見た目には事故車と分からなくなるらしい。
しかし、列車の番号は変わらないため、その番号がずっと記憶に留まるとのことだった。
車庫には沢山の線路があるが、一般には公表されていない人身事故を起こした車両専用のレーンがあるという。
その車両は、そこで一定期間『休車』として置かれる。
その後、神主により御祈祷が行われ、試運転をした後にダイヤに戻るとのことだ。
これも縁起担ぎかと思ったが、そうしなければその車両は続けて人身事故を起こすと言っていた。
どこまで本当のことか分からないが、現代科学では解明されない何かがあるのだろう。
(終)