毎晩3時になると人形が向かってくる
これは、僕が5~6歳くらいだった幼い頃の体験談です。
僕の家には和室があるのですが、その部屋には『京人形』らしきものが飾ってあります。
その人形なのですが、毎晩動くのです・・・。
僕は当時、いつも夜10時頃には寝ていました。
それに、僕はかなりのおばあちゃんっ子だったので、おばあちゃんが居るその部屋で一緒に寝ていたのです。
僕は毎晩のように3時になると目が覚めて、横を見ると廊下の奥からその人形がこちらに向かって歩いて来るのです。
怖くなった僕は「おばあちゃん!人形が!!」と言っておばあちゃんを起こすと、おばあちゃんは廊下に向かって行き、その人形を押し返すような仕草をしていました。
すると、人形はまた廊下の奥の方へ消えていくのです。
朝になって人形を見ると、いつものようにショーケースに収まっています。
そんなことが毎晩のように続きました。
あれから10年以上が過ぎたある日、おばあちゃんと家族らで怪談というほどのものでもないのですがそういった話をしている時に、こんなやり取りがありました。
「そう言えば、僕は幼い頃に人形が向かって来る夢をよく見ていたよ」
そう家族全員に言うと、おばあちゃんがこう言いました。
「そういやアンタは小さい頃、人形がくる!人形がくる!っていうから、おばあちゃん毎晩3時頃に起こされて、見えもせぇへんもんを押し返しとったわ」
僕は凍りつきました。
「アレは夢ではなかったのか・・・」と。
幼き頃にあったそんな不思議な体験でした。
(終)