瑕疵物件の一軒家を借りてから
これは、一人暮らしを始めた頃の話。
まず部屋を借りようと物件を探していたところ、不動産屋に一軒の借家が出ていた。
予算オーバーだったが、家一軒を借りる分にしては安い家賃。
私は仕事が不規則なので、マンションでは深夜や早朝の生活音が気になることもあり、思い切って借りることにした。
その家は、庭付きのこじんまりとした造り。
但し、前の住人が家の中で病死して、死後1ヶ月してから発見された『瑕疵物件』と聞いた。
ただ私は幽霊の類は信じていなかったので気にしなかった。
怪現象が起き始める
住み始めて半年ほどが過ぎ、友達が泊まりに来た夜のこと。
夜中に1階の台所へ下り、ラーメンを作った。
そして出来上がったラーメンをお盆に乗せて階段を上る途中、ふと階段上の2階部分に気配を感じた。
その直後、黒い人影がサーッと下りてきて、私の体を素通りして消えた。
私は恐ろしくてお盆を持ったまま固まってしまい、心配して部屋から出てきた友達に助けられた。
どうやら30分近く固まっていたらしく、ラーメンは伸びきっていた。
それ以降、ほぼ毎日のように金縛りに遭い、階段が怖かった。
金縛り中は、足元から女性2人がクスクスと笑っている声が聞こえたり、動かない私の腕の上に長い髪がバサーッと広がったりした。(私はショートヘア)
そして一番怖かったのは、兄が来た時の出来事だった。
昼寝中の兄が突然苦しみだし、うなされているのを通り越して「うぉぉーっ!」と吠えながらベッドの上で暴れ出した。
私には、必死に起き上がろうともがく兄を何者かが押さえ付けている、そんなように見えた。
そしてふと、ベッドの足元側の壁に貼られたポスターに目をやった。
そこには某キャラクラーの等身大ポスターを貼っていたのだが、平面のはずの絵が浮き出して見えた。
二次元のカラーイラストのはずの顔が、ブニブニとした肉感を持ち、顔つきもドス黒い皮膚で、なんだか物凄くイヤな感じのする表情になっている。
そのイヤな顔がどんどんと肉付けされていき、こちらに出て来ようとしている。
そう思った瞬間、私はポスターに飛びかかって一気に引き剥がした。
その途端、バタッと兄が動かなくなった。
「えっ?死んだ!?」と焦ったが、寝息を立てて眠っていた。
剥がしたポスターはただの紙に戻っていたが、怖かったこともあり、破れたので捨てた。
結局、そういった怪現象は半年ほど続いて止んだ。
それに、霊は一人ではなそうだったので、私が借りるまでの1年以上空き家だった期間に、色々なモノが入り込んでは棲みついていたのではないかと思う。
(終)