布団をくっ付けて寝ていたはずなのに
※名前は全て仮名
これは高校の卒業旅行の時に体験した、ほんのりと怖い話。
北海道のちょっと辺鄙な旅館に、私を含めて女3人で泊まった。
おしゃべりも楽しんで、そろそろ寝ようかということに。
窓側に私、真ん中は霊感のあるサトミ、部屋の一番奥にのんびり屋のユリ、という順で布団を敷いて眠った。
しばらくすると、隣に寝ていたサトミに揺り起こされる。
起きてみたら、サトミと布団をくっ付けて寝ていたはずなのに、なぜか私の布団はサトミの布団と離れて窓側に少し移動していた。
ちなみに窓の近くには、布で覆われた大きな鏡台があった。
私の寝相が悪かったんだなあと思い、「いや~、ごめんね」とサトミに謝り、布団をくっ付け直して再度就寝。
ところが、またいくらもしないうちにサトミに起こされる。
私の布団は気のせいか、さっきの時よりも窓の近くに移動していた。
サトミはユリも起こしていて、何も言わずに私の布団を自分とユリの間に敷き直した。
ちょっと怖い顔をしたサトミに「真ん中で寝なよ」と言われた私は、ああ寝相が悪くて迷惑かけるなあ、と思いながらまた眠った。
今度は朝まで起こされることはなかった。
翌朝、サトミは「あんた、引っ張られてたんだよね」と言った。
昨夜その場で言うと私が怖がると思ったそうで・・・。
そういえば前日に旅館の人から、ここらは維新後に罪人を投入して開拓した土地だという話を聞いていた。
開拓する機材などがなくて、木のてっぺんに人がよじ登ってその重みで木を倒したりして、かなり荒っぽい方法だったので沢山の犠牲が出たとか。
窓の外にはそういう人達の念が残っていそうな、鬱蒼とした雑木林が広がっていた。
そういったことに疎い私が唯一経験した、ほんのりと怖い出来事。
今でもたまに、2畳分くらい布団が隣と離れていたあの光景を思い出すことがある。
(終)