駅のホームで見かけた幼い二人
これは、私が学生時代の話。
その日、家の用事で学校を早退し、駅に着くとちょうど電車が行ってしまった。
でもすぐに次が来るので並ぼうと思ったら、ホームに小学1年生くらいの男の子と女の子が手を繋いで立っていた。
お揃いの制服と帽子、ランドセルを背負っていたので私立の子かな?と思いつつ、何気なくその子たちの後ろに並んだ。
ちょうど空いている時間だったので、その子たちが先頭で私が2番目。
そして後1分くらいで電車が来るという時に、足早に歩いてきたサラリーマンのおじさんがその子たちの前に割り込んだ。
空いてるのに何だよ!と思ったけれど、文句を言う勇気もなく黙っていた。
すると、男の子がぼそっと「どんってやったら、ぐちゃってなるかな」と言った。
周りが静かだったから、はっきりと聞こえた。
おじさんはギョッとした顔で振り返り、私も「えっ!?」と思った。
2人はお互いに何か耳打ちをしてくすくす笑っていて、おじさんは逃げるようにどこかへ去って行った。
車内でそっとその子たちを見てみたら、きれいな顔をした双子だった。
ずっと手を繋いでいて、無表情で前だけをじっと見ていてなんだか怖かった。
それ以降はその子たちを見かけることもなく、この時のことを誰に話しても信じてもらえなかった。
ただ、父に「この辺りに私立の小学校なんてないぞ」と言われた時は少しゾッとした。
(終)