山小屋に足止めをくらっていた夜のこと
これは、山仲間の心霊体験談。
雪で山小屋に足止めをくらっていた夜のこと。
寝ていたところ、人の話し声で目を覚まされた。
小屋の隅の方で五~六人が車座になって、何やらガヤガヤと話し込んでいる。※車座(くるまざ)=大勢が輪になって座ること
結構大きな声だった。
常識がないなとムッとし、「少し静かに話してくれませんか」と注意した。
すると、話し声がピタリと止まり、車座の皆が顔をこちらに向けてくる。
薄暗い中で、何故か顔だけが白く浮き上がってはっきりと見えた。
こちらを向いた一団は、皆がまったく”同じ顔”をしていた。
ただ、その後の記憶がはっきりしないのだという。
ハッと気が付くと、小屋の中は既に曙光で白んでいた。※曙光(しょこう)=夜明けにさしてくる太陽の光
いつの間にか夜が明けていたらしい。
雪も止んでいる。
山小屋の中にいるのは彼一人だけだった。
思わず、昨夜に彼らが座っていた辺りを調べてみた。
床の上には、誰かがいた痕跡など少しも残っていなかった。
その時は悪い夢でも見たのかと思って済ませたのだが、その二年後、同じ山小屋で寸分変わらず同じ体験をしたそうだ。
やはり雪の夜で、一人きりの時に。
「もうあそこは利用しない。俺とは相性が悪過ぎる」
彼は、そう言ってぼやいていた。
※七人ミサキ|参考
四国地方や中国地方に伝わる集団亡霊。災害や事故、特に海で溺死した人間の死霊。その名の通り常に七人組で…(Wikipediaより)
(終)