お寺に泊まった日のこと
小学生の頃、
ばあちゃん夫婦たちに、
福岡県の篠栗お遍路に
連れて行かれた。
一日で何十カ所の
お寺を巡るのは、
小学生の俺には退屈だった。
初日の晩は、
あるお寺に泊まった。
その日は蒸し暑く、
俺はなかなか眠りにつけなかった。
布団の中で悶々としていると、
「参ったなぁ・・・参ったなぁ・・・」
という、
低い声が聞こえてきた。
俺は、「おじいちゃん?」
と呼びかけた。
じいちゃんの方を見てみたが、
イビキをかいて熟睡中。
ばあちゃんも同じだった。
俺は怖くなって
布団の中に潜り込み、
必死で耐えた。
すると、その声は
だんだん大きくなった。
じいちゃんのイビキと
ミックスされ、
俺はパニックになった。
泣きながら、
ばあちゃんを無理矢理に起こして、
事情を伝えた。
俺は汗でびしょびしょだった。
ばあちゃんは俺に優しく
「大丈夫だよ」と言ってくれたが、
俺は怖くてたまらなかった。
翌朝、6時頃から
住職の説教が始まったので、
それに参加させられた。
俺は坊さんに、
その夜にあったことを話した。
すると坊さんは一瞬、
目を逸らし、こう言った。
「大丈夫。子供には悪さしないから」
一体、何だったのか・・・。
(終)