ブルートレイン

これは俺が7歳の頃の夏休み、

母親の実家である鹿児島県にブルートレインで帰省した時の話。

 

ブルートレインとは、

言わずと知れた寝台列車。

 

今は無くなってしまったが、当日はブルートレインに乗って

長距離を移動するのはワクワクした。

 

なにしろ初めてのブルートレインだった。

 

名古屋駅を出発して何時間か経って、

いよいよ寝台車のベッドで寝るという一大イベントがきた。

 

なんかすごくワクワクしたなあ。(笑)

俺は2段ベッドの2階で寝ることになった。

 

しばらくカーテンを少し開けて、

外の景色を見ていたが、やがて疲れて寝てしまった。

 

夜中におしっこに行きたくなり、

俺は寝ぼけ眼でベッドから降りてトイレに向かった。

 

用をたしてベッドに戻る。

ドアを開けて右側の3つ目の部屋。

 

俺は間違えないようにしっかり覚えていた。

 

鼻糞をほじりながらベッドに上がろうと階段に足をかけた時、

俺はドキッとなる。

 

「あれ?誰かいる?」

 

布団には子供くらい・・・、

そう、自分と同じくらいの背丈の膨らみがあり、

顔は壁側に、背中をこちらに向けていた。

 

もう眠気など吹っ飛び、

ドキドキしながら布団をめくってみた。

 

するとそこには古めかしい着物を着た

男の子らしき子供が眠っている。

 

ガクガク震えながら、

俺はその子の背中を軽く叩いてみた。

 

すると、壁側に向けていた顔を

俺の方へ振り向いた。

 

「うわっ!」

 

俺は思わず叫んだ。

 

その子の顔と髪は真っ黒けに焦げて、

眼球が少し飛び出していたのだった。

 

俺はあまりの恐怖に

階段から落ちて泣いてしまった。

 

びっくりした家族や周りの人達が、

「どないしたんや」って集まってきた。

 

誰かが車掌さんを呼んだらしく、

車掌さんまで駆けつけてきた。

 

俺は、「ベッドに焼けた子供がいる」と、

2階のベッドを指差した。

 

すると父親が階段に足を掛け、

ベッドの2階を確認。

 

「なんや、誰もおらんで。

こいつは、また寝ぼけおって」

と言ってゲンコツを俺の頭に食らわした。

 

俺も確認したが、

やはり誰もいなかた。

 

周りの人たちは、

人騒がせなといった表情で各部屋に戻った。

 

しかし、車掌さんの一言を俺は忘れない。

 

「またか・・・」

 

あくる日、俺は車掌さんに昨夜の出来事があった時、

列車が走っていた場所を尋ねてみた。

 

「広島だよ・・・」

 

その日はたしか8月6日だった。

 

(終)

 

※決して広島を揶揄した物語ではありません。

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