祖母が成仏するには
私はお婆ちゃん子でした。
両親が共働きでしたし、
一緒の家に住んでいたので、
私は小さい頃から祖母には
随分と甘えました・・・。
祖母も孫の中で
私が一番可愛いと、
二人きりになった時には
よく言ってくれました。
しかし、
人には必ず寿命があり、
どんなに大切な人にも、
いつかは必ず死が訪れます。
そして、祖母が死んだのは、
私が高3の夏の事でした。
私は一週間くらい、
泣き続けたのを覚えています。
その年の冬の事です。
受験勉強で疲れていた私は、
夜中に何かの気配で
ふと目が覚めてしまいました。
枕元を見ると、
祖母が着物を着て
ちょこんと座っています。
すぐに幽霊だと気がついたのですが、
不思議と怖くありません。
祖母は生前の様な優しい顔で、
私を見つめていたからです。
「おばあちゃん」
私は声を掛けました・・・。
すると、祖母の霊が私の頭の中に
語りかけてきました。
「生前、悪い行いをしたので、
成仏するには一番可愛がっていた身内を
道連れにしなければならない・・・」
そんな感じの意味が、
頭を駆け抜けた瞬間!
祖母が私の首を掴むと、
もの凄い力で引っ張ります。
私は声を出そうとしたのですが、
首を強く締められているので
声は出ません。
頭の中で、
「お婆ちゃん!やめてくれ!」
と何度も念じていました。
しかし、祖母の両手は
力を緩めませんでした。
気が遠くなる瞬間に、
頭の中で「チェッ・・・」と、
汚く舌打をするような意味が
聞こえたと思ったら、
私は気を失ってしまいました。
気が付くと、
両親が私の部屋にいました。
両親に言わせると、
大きな物音が聞こえたので
部屋に入ると、
私が白目を剥いて、口から
泡を吹いていたらしい。
あの日以来、
祖母の霊が二度と、
私の所へ来る事はありません。
そして私はこの話を誰にも、
両親にさえも話していません。
しかし、テレビ番組で
霊能者がよく、
先祖の守護霊だとか、
祖母の霊が守っていると、
神妙な顔で話しているのを聞くと・・・
「何を言うかぁ!偽物霊能者め!」
と思ってしまいます。
(終)