峠道の駐車場で睨み付けてくる連中

私の田舎には、

走り屋が集まる峠道があり、

 

私もよく行っていました。

 

ある夏の終わり、

 

週末の夜に友達と一緒に

その峠に出掛けよう、

 

ということになりました。

 

行ってみると、週末なのに

全然人がいませんでした。

 

いつもなら沢山いる

走り屋もギャラリーもいなくて、

 

峠道はいつにも増して

暗い感じでした。

 

何でだろうと思いながら

どんどん走って、

 

折り返し地点になる駐車場まで

来てしまいました。

 

駐車場もいつもは

沢山の車が来ていて、

 

ギャラリーも集まってたり

するのですが、

 

その日は一台も

来ていませんでした。

 

がらんとした駐車場で、

 

自動販売機の明かりだけが

煌々としていました。

 

でも、もうしばらく待ったら

人が集まってくるかもしれないと思って、

 

ジュースを飲みながら

友達とだべっていました。

 

ふと気がつくと、

 

駐車場の反対側に5~6人の

男女のグループがいました。

 

「やっぱり誰か来てるじゃないか」

 

と思いました。

 

そっちの方は暗いから

良くは見えなかったんですが。

 

そのまましばらくだべってたら、

友達が、

 

「帰ろう、帰ろう」

 

と言い出しました。

 

「別にいいじゃないか、

もうしばらく待とう」

 

と言ったのですが、

 

友達があまりに

真剣な様子なので、

 

納得いかないまま

帰ることにしました。

 

駐車場を出ながら、

 

なぜそんなに帰りたがる

のかを聞いたら、

 

「向こうにいた連中見たか?

ずっと俺たちのこと睨み付けてたぞ」

 

って言うんです。

 

正直、それがなんなの?

って感じでした。

 

駐車場を下って、

 

最初のコーナーに

集中することにしました。

 

すると、コーナー脇の所に

ギャラリーが数人来てるのが見えました。

 

ちょっと彼らの視線を意識しながら

コーナーを抜けました。

 

次のコーナーに近づくと、

また何人かギャラリーがいました。

 

でも、「何か変だな・・・」

と思いました。

 

コーナーが近づくにつれて、

その違和感の正体が分かりました。

 

そのコーナーにいた連中は、

 

先ほどの駐車場にいた連中

としか思えませんでした。

 

思い返すと、

 

最初のコーナーにいたのも

そいつらだったような気もします。

 

あれ、まさか?と思って、

 

脇を通り過ぎながら

連中に目線をやりました。

 

そいつらは私たちを

睨み付けてました。

 

黒目のない白い目で。

 

私は絶叫し、

 

気付いた友達も、

隣で絶叫です。

 

総毛立つ思いで、

そこを通り過ぎました。

 

とにかく、早く

ここから離れたい一心です。

 

それなのに、

 

次のコーナーのところに

人影が見えます。

 

まさか、まさか・・・

と思いましたが、

 

やはりそれは、

そいつらでした。

 

そいつらは、私達に

背中を向けて立ってました。

 

でも、首はこっちを

向いていたんです。

 

そこからは地獄でした。

 

次のコーナー、

 

その次のコーナーにも

その連中が立っていて、

 

私たちを睨み付けて

いるんですから。

 

自分たち以外、

すれ違う車も後から来る車もないし、

 

心細いこと、

この上ありませんでした。

 

ようやく町に出た時は、

 

心の底から助かった、

と思いました。

 

友達を送った後で、

自分の家に帰りました。

 

週末なのに、

 

あまりに早く帰って来たので

母親がびっくりしていましたが、

 

先ほどの事を話す気には

なれませんでした。

 

母親に風呂があるから入れと言われ、

 

その時には大分落ち着いてきてたので、

言われるまま風呂に入りました。

 

そして、頭を洗っていると、

 

何かが頭に「つんっ」て、

当たったんです。

 

一瞬、何なんだ?

と思いましたが、

 

頭が泡だらけで

目を開けられません。

 

気にしないでまたゴシゴシしだしたら、

また頭に何かが当たるんです。

 

今度はさすが気になって、

無理に目を開けてみました。

 

すると、

 

風呂の窓からあの連中が身を乗り出し、

こっちに手を突き出して・・・。

 

(終)

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