立体駐車場で見た怪異の予兆
なぜか突然思い出して、怖くて寝れなくなってしまった。
これは、2年くらい前のこと。
母と地元のショッピングセンターで買い物をするため、車を止めようと立体駐車場に入った。
夕方の5時くらいだったが、冬の初めだったので外は薄暗く、駐車場に入るともう真っ暗だった。
それなのに、駐車場内は明かりがついていない。
「入り口に管理人さんいたのにね」と言いながら、なんとか空いているところを見つけ、暗がりの中で車を止めた。
その時、ちょうど右隣の車の夫婦らしき二人が両手に荷物いっぱいで戻ってきたのだが、男性がドアも開けずに車の左後部の下辺りを覗き込み、何かを探しているようだった。
女性に「何してるの、早く開けて」と言われているのを横目に、私たちが車から出た瞬間、ようやく明かりがついた。
時刻は夕方の5時18分。
「ほんまは5時につくのが遅れたんかな?」
そう母に話しながら駐車場を出た。
ただ、普通の会話と変わらぬ口調で母が言う。
「あんたに言ったら怖がると思ったから言わなかったんだけどね、さっきバックで駐車する時、隣の車の後ろに人がいたのよ。サイドミラーに映ったのよ。私らの右隣の車の後ろで顔だけ出してたの。
でもね、顔が斜めに出るんじゃなくて地面に対して垂直に。まっすぐだったのよね。気持ち悪かったわ」
これを聞いた時、もしかして隣の車の男性も、誰かいるように見えたから探すような仕草をしていたんじゃないかと思ってゾッとした。
この立体駐車場は出口が一つしかなく、もちろん誰もいなかった。
うちの母と妹は、稀にこういうのを見るらしい。
すごく淡々とそんな話をするせいで余計に怖い。
怖がらせようとしているわけではない話は本当に怖い。
なぜ突然思い出してしまったんだろう…。
(終)