無人の踏切
我が家の隣の無人踏切。
飛び込み自殺の名所だ。
電車に本気で飛び込む奴と言うのは、
微妙な心理が働くらしい。
邪魔をされたくないが、飛び込んでも
誰も気がついてもらえなくて、我が身が
粉砕野ざらしのままってのも嫌という。
ちょうど、件の踏切は農道なので
深夜は暗くて人通りが絶える。
無人かつ無踏切なので、
夜中に立っていても怪しまれない。
完全な田舎というわけでもなく、
隣に(我が家)一件だけ家があるので
飛び込んでも見つけてもらえるだろう、
って感じなのかどうかはわからんが、
飛び込みやすい雰囲気らしく、
1~2年に一回ぐらいは必ず飛び込みがある。
正直、あまり気持ちのいいものではないけど、
飛び込みがあった時の電車の音とか、
警察の実況見分の風景や、飛び込みの後、
大方の身体を回収して列車が運行再開した後でも、
係り員がバケツと火ばさみ片手に
列車と列車の合間や線路に食い込んだ肉片を
摘まんでいたり、それも終わった後に
カラスが押し寄せてきて、なにやら筋っぽいものを
加えて御馳走祭りをしている絵も慣れた。
最悪だったのが、夜中に眠っていたら、
列車の警笛と急ブレーキの音とほぼ同時に、
枕元の窓ガラスに「ドン!!」っていう衝撃。
飛び込んだ奴の首が、
どういうわけがブッ飛んできて、
窓ガラスに激突って・・・。
ブツを見る前に頭部は回収してもらったから、
まだマシだけど。
翌朝、窓ガラスには血と、
何かわからないドロっとしたものがこびり付いていて、
マジで泣きながらホースで掃除したよ。
飛び込みだけはやめてくれ!
(終)