恋人からの贈り物は気をつけろ 1/4
半年くらい前、
怖い体験をした。
心霊現象ではないが、
かなり気持ち悪い体験だ。
中学生だった頃、
俺のクラスに霊感少女がいた。
家が神社だか何からしいのだが、
概観は普通の家だったし、
クラスのみんなは俺も含めて、
彼女のことをうそつきだと言って
いじめていた。
だが、からかい半分で、
「俺の守護霊みて」
「俺の悩みごと当てて」
と言うと、
必ず信憑性があることを
言われたり、
悩み事を言い当てられたりして、
皆には言ってなかったけど、
俺は彼女のことが少し怖かった。
卒業してからは高校も違った。
(というか、彼女は高校に
行かなかったらしい)
ということもあり、
全然付き合いがなくなっていたし、
今の生活が楽しくて、
すっかり忘れていた。
今では反省しているが、
高校に行き始めてからの俺は、
結構女の子を傷つけるような
生活をしていた。
二股をかけたり、
酷い振り方をしたり、
相当恨みを買ってたのだが、
ある日、俺宛に
小さな荷物が届いた。
中身は手編みの
真っ赤なマフラーで、
俺はてっきり、
俺のことを好いてる女の子
からのものだろうと思って、
ニヤニヤしながら部屋に持ち帰った。
部屋の戸を閉めた時に、
何か変な、
生温かいような空気が
頬にかかったが、
気にせずにマフラーを
広げてみた。
くるくる巻かれいてたマフラーが
伸びると同時に、
床にごそりと何か、
変な固まりが落ちた。
よく見ると、
胴回りが腕の太さほどもある、
大きい藁(わら)人形だった。
よく見ないと分からなかったのは、
錆びた釘がダンゴになるくらい
打ち込まれていたからだ。
俺はゾッとして、
思わず藁人形を足で蹴って、
机の下に追いやってしまった。
オカ版はよく見るけど臆病だし、
自分にこんなことが起きたのは
初めてで、
心臓がバクバクいって、
どうしたらいいか分からなかった。
とりあえず友達に電話したが、
みんな「ウソつけ(笑)」とか言って、
笑って相手にしてくれない。
言い知れない恐怖というか、
気持ち悪さみたいなので
背中が震えて、
ふと、頭に浮かんだのが、
中学時代の霊感少女のことだった。
卒業アルバムと文集を引っ張り出して、
彼女の自宅の電話番号に電話してみた。
本当だったら、
近所の神社とかに持っていけば
それで良かったかも知れないが、
動転していて、
そういう発想は出てこなかった。
電話に出たのは、
霊感少女(Sさん)だった。
俺は慌てて名前も名乗らずに、
「う、うちに藁人形届いて、
赤いマフラーが、それが・・・」
と訳の分からない説明をしたのだが、
Sさんはすぐに、
「○○(俺の苗字)くんですよね?
今日これから行って大丈夫?」
と聞いてくれた。
今日は親も仕事で
遅くなるらしいので、
藁にもすがる思いで、
頷きながらうんうんと言った。
彼女は午後の3時くらいには
家に行けそうだと言うので、
目印になるガソリンスタンドで
待ち合わせすることにした。
電話を切った後、
俺はとにかく部屋に居たくなくて、
エロ本だけさっさと片付けてから
部屋を出た。
居間でハラハラしながら
時間が来るのを待ったのだが、
上の部屋(居間の真上が俺の部屋)から、
コツコツと変な音がする。
怖くなってテレビをつけてみるが、
音はだんだん大きくなった。
足音とかじゃなくて、
ごん、ごん、って感じの、
何かを床に叩きつけてる
みたいな音だった。
部屋を見に行こうかどうしようか
悩んでるうちに、
約束の3時が
近くなってしまったので、
近所のガソリンスタンドに行った。
歩いて少し冷静になってくると、
俺にあんなものを送ったのが
誰なんだろうとか、
そういうのが頭に浮かんできて、
腹が立ってきた。
3時少し前になって、
Sさんが原付に乗ってやってきた。
Sさんは中学時代の面影も
少しあったが、
切れ長の美人になっていた。
秋にしては大きく厚そうな
コートを着ていて、
足元は着物みたいな感じで
ひらひらしていた。
家までの道のりで、
とりあえずの状況と、
変な音がするのをSさんに話した。
Sさんは原付を押しながら
うんうんと頷いていたが、
怖いくらい何も喋らなくて
少し気味が悪いと思った。