恋人からの贈り物は気をつけろ 4/4
Sさんは、全部を見通した
みたいな目で一言、
「生臭物を食べたでしょ」
と言った。
俺はその時まで、
生臭物を禁止されたのを
すっかり忘れていて、
あっ・・・という顔をしたら、
Sさんは呆れたように
溜息をついた。
「経血や髪や、
人間の身体の一部を仕込んだ
人形っていうのは、
必ず何かおかしなものが
取り憑くものなんです。
生臭物を禁じたり、
日本酒を勧めたのは、
そういうものから身体を
守るためなんです」
俺はようやく今回の事の
恐ろしさに気付いて、
夢の事も全部Sさんに話して
助けを求めた。
Sさんは、
「とにかく、
これからは私の言うことを
必ず守ってください。
病院食で魚やお肉が
出た場合は、
食べた後に必ず塩を
指に摘まんで、
喉から胸までなぞってください。
お酒は無理でしょうから、
その代わりに、
水や利尿効果のあるものを
出来るだけ沢山飲んで、
身体の中を綺麗に保ってください」
と、わざわざ紙にメモまでして
渡してくれた。
それから俺に、
「ちょっと身体を起こしてもらえますか」
と言うので、
点滴をずらしながら
身体を起こすと、
Sさんは俺の頭に触って、
髪の毛の中から、
短い赤い変なものを取った。
赤い毛糸が千切れてぐちゃぐちゃに
なったものだった。
「いいですか・・・
これから先、
彼女のことを深く考えたり、
恨んだり憎んだりという感情は
持たないでください」
さらに、
「これを言ってしまうと、
彼女を忘れようにも忘れられなく
なってしまいそうだから
言いたくなかったのですが、」
と付け加えて、
「本当に怖ろしいのは、
この手編みのマフラーなんです。
今後、あらゆる場所で、
赤い毛糸があなたを
監視しています。
あなたが彼女を憎らしく思う度に、
赤いマフラーで首を締められる夢が
続くはずです。
多分、送った本人も思わぬ事
だったのだろうと思いますが、
あのおまじないよりも怖いのは、
あなたに対する愛情や恨みつらみを
込めて作られた、
こういうものなんです」
青くなった俺に、
Sさんは更に続けた。
「もし・・・部屋に、
別れた他の女性からの贈り物
があったら処分してください。
手作りのものは言語道断、
既製品でも出来るだけ。
贈られたものには必ず、
想いとかが篭もっています。
赤いマフラーに助長されますから」
退院した後、
俺はすぐに元カノたちからの
贈り物を処分したのだが、
贈られたコップとか小物入れの中に、
赤い毛糸が入っていた。
毛糸が入っていたというか、
赤い埃みたいなものが付いていた。
毛糸を解すとあんな感じに
なると思う。
クッションの綿の中や、
ぬいぐるみの中にも、
赤っぽい埃が入っていた。
気持ち悪くて、部屋の中を
隅々まで大掃除したのだが、
それからも例の彼女のことばかり
いつも頭に残って、
よく首を締められる夢を見た。
その後、
3ヶ月くらい前に寝不足で
軽い鬱状態になった。
医者から安定剤を貰ってからは、
彼女を憎みそうになる度に、
それを飲んでさっさと
寝てしまうことにしている。
あれ以来、女性のことが
怖くて怖くてしょうがなく、
付き合っていた彼女には
正直に話して、
バッカじゃねーのと
罵られながら破局した。
Sさんには、あの夢を見ると
時々だが連絡をしている。
たまに、お清めした清酒を
持って来てくれたりして、
こんな俺に親身になってくれている。
生臭物は退院から二週間後に
解禁された。
藁人形に憑いていたものは、
入院中にもっと弱った他の誰かの
所へ行ってしまったそうだ・・・が、
俺は怖くて未だに肉や魚を
食べたいとは思わない。
今のところ、
例の彼女から新しいおまじないの
贈り物は来ないが、
例の彼女を知る友人が話すには、
最近の彼女は、おかしな事や
奇妙な言動ばかりで怖い、
との事だった。
もう少し続きがあるのだが、
とりあえずここで終わらせておく。
恋人からの贈り物には気をつけろ・・・
(終)
こわっ
はやく忘れるが勝ち
自業自得な所あるから今後は気を付けろよw
北海道の話かな?
{}みたいな模様の着物とか、変な模様を彫った棒(多分イクパスイの事かと)とか出てくるし、
北海道ならば、和人のあまり知らないお祭りや、アイヌの風習や地方から持ち込まれた風習が混ざって、新しく生み出された呪いも沢山あるだろうなぁ。