人形を供養する神社で見てしまったもの 1/3

人形寺

 

ある夏の日の話をしようと思う。

 

その日は、

 

前々から行くつもりだった

近場の神社を訪ねた。

 

俺は少々オカルトな趣味があり、

変な話や不思議な物等が大好物だった。

 

この日も、

 

知人から聞いた神社に

行ったのだった。

 

知人の話だと、

 

何でもその神社には大量の人形が

安置されているらしかった。

 

俗に言う『人形寺』と似たようなモノか。

 

※人形寺

人形やぬいぐるみ等を供養する寺。

 

だが、有名な神社ではなく、

 

報道番組で取り上げられた事なども

全く無い。

 

そんな場所だった。

 

近場と言っても、

車で一時間半かかった。

 

途中、山道に入り、

 

ガタガタ揺れる車内で一人、

目的地に思いを這せていた。

 

神社に着き、

車を停めて階段を登った。

 

結構長い階段で

日頃の運動不足からか、

 

息を荒げながら、

妙な高揚感に包まれていた。

 

階段が長ければ長い程に、

楽しみが増す気がした。

 

段差で切れていた景色から、

遂に神社が顔を現す。

 

立派な鳥居をくぐり、

眼前に神社を捉えた瞬間・・・

 

妙な耳鳴りがした。

 

正直、こんな気分になったのは

初めてだった。

 

自慢じゃないが、

 

俺には霊感なんてモノは

無縁の沙汰だ。

 

だが、その感覚は本物で、

 

臆するどころか、

逆にヤル気が湧いて来た。

 

なんのヤル気かは知らないが・・・

 

早速、境内を見回す。

 

立派な神社だ。

 

結構広いし、造りも綺麗だ。

 

だがやはり、

 

そこには普通じゃない光景が

広がっていた。

 

神社に納められた人形達は、

納まりきらずに床下まで浸食している。

 

いくつもの『目』に見られる様な、

突き刺す視線を感じた。

 

それだけ圧巻だった。

 

余りに非現実的な光景に、

暫く心を奪われ・・・る暇は無かった。

 

正面の大きな建物・・・

恐らく本殿だろう。

 

そこから袴姿の人間が、

慌てた様子で出てきた。

 

一人、

隣の建物に走っていった。

 

何かあったか!?

 

不謹慎にも「ラッキー」と心の中で呟き、

 

人形が安置されている方の、

袴の男が入っていった建物に駆け寄った。

 

すると、

 

本殿からまた人が二人、

バタバタと出てきた。

 

一人を捕まえ、

何があったか尋ねてみた。

 

「忙しいから後にして下さい」

 

男はそれだけ言うと、

またバタバタと人形の中に消えていった。

 

一体何なんだ?

 

釈然としない面持ちで佇んでいると、

本殿からこれまでとは違う、

 

正装とでも言うのだろうか?

 

そんな格好の神主と思われる

人物が出てきて、

 

俺に声を掛けてきた。

 

「人形を納めに参られたのかな?」

 

俺は、

 

「いいえ、ただ参詣しに来ただけです」

 

と答えた。

 

すると、

神主らしき人は悟すように、

 

「なら帰りなさい。

 

悪い事は言わない。

今日は都合が悪い。

 

また出直して来なさい」

 

と静かに言った。

 

「何かあったんですか?」

 

思い切って尋ねてみたが、

 

神主は「関わらない方がいい」

とだけ言い残し、

 

本殿に帰っていった。

 

引っ越しみたいに騒々しい中、

自分は凄く場違いな気がした。

 

どうせ人形は逃げない。

 

ここは神主の言う通り、

改めて出直すかと思い帰ろうとした時、

 

ゾロゾロとさっきの三人と、

さらに二人が出てきた。

 

棺の様な大きな箱を抱えている。

 

奇妙な一行は本殿の裏に消え、

後から神主も出てきて、

 

またもや裏に消えていった。

 

ふと気付けば、

 

自然と本殿の方に歩みを進めている

自分がいた。

 

警告に対する恐怖心よりも、

好奇心が勝っていた。

 

ここまで来たら見るしかない。

 

本殿の脇の道を進んでいく。

 

道は木が生い茂り、薄暗く、

苔がむしている。

 

少し進むと、

前方が開けた広場の様な場所に出た。

 

神主達は慌ただしく、

 

なにやらキャンプファイヤーの

木組みの様なものを、

 

四方に作っていた。

 

真ん中には、

 

件の箱が一番頑丈そうな

木組みの上に置いてある。

 

神主と目が合った。

 

怒られるかと思ったが、

 

別段気にも留めない様子で

作業を続けていた。

 

何だか許可を貰った気になったので、

木陰から広場に踏み出した。

 

何が始まるのだろうか?

 

期待と不安でソワソワしながら、

事の成り行きを見守っていると、

 

視界に人が映った。

 

神主でも袴姿でも無い。

 

普通のじいさんだ。

 

俺の右、20メートルくらいの所に立ち、

俺と同じように神主達を見ていた。

 

俺はおじいさんに近付き、

話しかけてみた。

 

(続く)人形を供養する神社で見てしまったもの 2/3

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