夜の墓場で出会った二人の少女 1/3

山の墓地

 

幽霊ではなく人間でしたが、

 

年月が経つにつれ、

本当にあの子たちは人間だったのか、

 

と自信が無くなっていく体験談です。

 

俺が19歳の頃の話。

 

高校は卒業していましたが、

これといって定職にも就かず、

 

気が向いたら日雇いのバイトをしながら

ブラブラとしていました。

 

その頃の遊び仲間は、

 

高校の時の友人グループが

いくつかあり、

 

その日もその内のひとつの

グループの奴の家に集まり、

 

だらだらと遊んでいました。

 

そのグループの連中は、

 

地元では結構有名な

悪い奴らの集まりでした。

 

俺はケンカも弱いし、

バイクも持っていなかったけれど、

 

そのグループのリーダーが幼馴染で

家も近かったため、

 

たまに遊んでいました。

 

夜も更けてきたので、

俺達は肝試しへ行くことにしました。

 

みんな幽霊なんて信じていなかったし、

怖がってもいませんでしたが、

 

行く途中に女の子でもナンパ出来たら

一緒に連れて行こうぜ、

 

くらいの軽いノリでした。

 

一人がバン(車)で来ていたので、

それに6人全員で乗り込み出発です。

 

幾つかある肝試しスポットのうち、

一番近い所に向かいました。

 

そこは山の中にある墓場で、

頂上に向かって墓場が広がっています。

 

入り口に降り立った時、

 

その墓場の一番上には何か、

白い影が見えました。

 

よく見るとそれは二人の人間で、

 

さらに近付いてみると、

まだ中学生ほどの少女でした。

 

髪は長くパサパサで、

手入れをしている様子はなく、

 

まるで人形の髪のようだと思ったのを、

今でも覚えています。

 

顔にも髪がかかり、

表情はまったく読めません。

 

顔のつくりは違いましたが、

二人ともそっくりに見えました。

 

白く見えたのは、

夏服のセーラー服姿だったからです。

 

一体どこから来たのでしょう。

 

あの場所から出てくるには、

 

車でもっと山の上まで登らなくては

ならないはずです。

 

なのに二人の少女には、

連れがいる様子もありません。

 

どんどん近付いてきます。

 

よく考えたら、

 

普通こんな人気のない墓場で

不良グループに遭遇したら、

 

向こうも怖いはずです。

 

しかし彼女達は無表情のまま、

俺達の目の前に来て止まりました。

 

いいようのない恐怖が襲いました。

 

理屈ではありません。

 

ただゾッとするというのは、

このことだと思います。

 

それは、

他のメンバーも同じようでした。

 

「おまえらどっから来たん?」

 

リーダーのMが聞きました。

 

二人は無表情のまま、

 

ゆっくりと同時に山の頂上を

指差しました。

 

どっと嫌な汗が吹き出ました。

 

するとそこに、

どこからともなく犬が走ってきました。

 

しかもその犬は白内障なのか、

目が白く濁っているのです。

 

あまりにもタイミングよく現れたので、

危うく叫びそうになりましたが、

 

すぐ後ろから飼い主らしきお爺さんが

やってきました。

 

そのお爺さんは

この近くに住んでいるらしく、

 

いつもこの道を散歩コースに

しているそうです。

 

お爺さんの散歩に付き合うように、

 

自然に俺達6人と少女達は

ゆっくりと歩き始めました。

 

お爺さんと少女達が前を歩き、

何か話しをしています。

 

お爺さんは土の盛り上がったところを

ガシガシ蹴飛ばしながら、

 

「ここ、無縁仏の墓や。

そこに卒塔婆が倒れとるやろ」

 

と言いました。

 

※無縁仏(むえんぼとけ)

弔ってくれる縁者のいない死者のこと。

 

※卒塔婆(そとうば)

死者の供養のため、墓石の後ろに立てる細長い板。

 

そして再び少女達と言葉を交わすと、

 

俺達の方を振り向きもせずに

去って行きました。

 

唖然とする俺達のところに

少女達がやってきて、

 

初めて口を利きました。

 

「今、お爺さんに聞いたんやけど、

この先にもっと怖い場所があんねんて。

 

呪いの藁人形がぎょうさん見つかる所。

行ってみいへん?

 

正直、俺は行きたくなかったけれど、

中学生の女の子が行くというのに、

 

「いや、おっかねえからやめとく」

 

とは言えません。

 

結局、女の子達をバンに乗せ、

行ってみることにしました。

 

(続く)夜の墓場で出会った二人の少女 2/3

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