一人きりの肝試しで神社に出向いたら
これは、同級生の体験話。
少年時代、一人で夜中の神社に肝試しに出向いたのだという。
そこの神社は町と山の境界に建っており、そこから奥はもう山の領域。
長い石段を半分ほど上った辺りで、軽い音が上から転がり落ちてきた。
懐中電灯の明かりの中、子供用の靴が片方だけ、彼の真横を落ちていった。
それほど勢いがついているわけでもないのに、ただの一度も段に引っ掛かることなく、実に滑らかに下方の暗がりへと消えていく。
立ち止まってみたが、上から落とし主が下りて来る気配は一向にない。
急に怖くなった。
この上で、靴を落とした何かがじっと待っている。
闇の中で。
一度そう考えてしまうと、もうそれ以上は石段を上ることは出来なかった。
走り出すのも恐ろしく、ゆっくりと、ゆっくりと引き返した。
一番下まで下りてみたが、“先に落ちたはずの靴は何処にも見当たらなかった”という。
(終)
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