ポストに入っていた切手の無い封筒

 

学生の頃の話。

 

同じサークルの後輩で、

 

俺のことを凄く好きになって

くれた女の子がいた。

 

とてもいい子で、

みんなからの人気もあった。

 

そんな子に、

ある日、告白された。

 

でも俺には他に好きな人がいたから、

丁寧に断った。

 

彼女は、まさかフラレルとは

思っていなかったみたいで、

 

かなりショックを受けていたようだった。

 

その後、

俺はサークルを引退し、

 

就職活動やら色々と忙しくなり、

彼女とは会わないまま卒業した。

 

（あえて彼女を避けていた、

と言った方が正しいかも知れない）

 

東京の会社に就職し、

 

一人暮らしを始めてから

3ヶ月くらい経ったある日。

 

深夜、仕事から帰ると、

ポストに切手の無い封筒が入っていた。

 

開けてみると、

例の彼女からの手紙だった。

 

便箋には昔の思い出と、

 

今でも俺のことを忘れられない

というようなことが書かれており、

 

それとは別に、

走り書きしたようなメモが入っていた。

 

『ここを探すのに苦労しました。

 

せっかく来たのに留守みたいで、

とても残念です』

 

親以外に誰にもここの住所なんか

教えていないのに･･･

 

ただ、一番怖かったのは、

もう一枚入っていた紙の方。

 

そこには、

 

俺と彼女が二人で微笑んでいる絵が

描かれていた。

 

想像で書いたわりにはすごくリアルで、

しかも上手で驚いたのだが、

 

髪の部分が明らかに人間の毛･･･

 

おそらく彼女のものと思われる髪の毛が、

丁寧にびっしりと貼り付けてあった。

 

今はまた引越して、

別の部屋に住んでいるのだが、

 

またいつか同じことが起こるのではないかと、

今でも不安な毎日を過ごしている。

 

（終）