金縛りに遭った直後に起きた霊障
最近、パソコンが故障したのだが、
それで思い出したことがある。
3年程前のこと、
その日は夕方頃から寝ていた。
起きた時にはもう真っ暗で、
時計は深夜2時を回っていた。
水でも飲もうと思い、
身体を起こそうとしたけれど、
首しか動かない。
(ああ、頭だけ先に起きた状態なんだな。
これが俗に言う金縛りか)
なんて、わりと冷静に真っ暗の部屋で
身体が起きるのを待っていた。
が、しばらくすると違和感を感じた。
目覚めに起こった霊障の正体は・・・
・・・何か聞こえる。
じっと耳を澄ますと、
小さな子供の声で『かごめかごめ』を
歌っているのが聞こえた。
いや・・・むしろ、
俺の枕の真後ろから聞こえる。
(金縛りで怖がる人がいるわけだが、
この場合はタネを知っていても怖いな)
などと考えていると、
ふと部屋の周りをぼんやりした明かりが
ぐるぐると回り始めた。
例えるなら、
部屋が万華鏡の内側になった感じ。
戸惑っていると、
背後で子供の合唱が始まった。
叫びたかったが声も出ない。
緊張が限界に達したところで、
ようやく身体が動いた。
同時に、
部屋は暗闇と静寂につつまれた。
俺はとりあえずネタが出来たと思い、
パソコンのある部屋に向かった。
ふとモニターを見ると、
ぼんやりと光っている。
遠巻きに目を凝らして見てみると、
無表情の子供が俯いていた。
モニターの中で。
心臓が止まりそうになったが、
何かの錯覚だと思って様子を窺(うかが)った。
すると、
子供の両耳から手がくねくねと生えてきて、
何かを呟いた。
その瞬間、俺に何かのスイッチが入り、
絶叫しながら外に逃げた。
混乱した状態で夜道を走り、
かなり遠くまで来たところで何を思ったか、
他人様の庭先の物干し竿の前あたりに
座り込んだ。
足はガクガクと震え、
警察に電話しようか迷っていた。
迷っているうちに冷静さを取り戻し、
やっぱり寝ぼけていたんだろうと考えた。
ポケットに入っていたガムを噛みながら、
とりあえず他人様の敷地はマズイと思い、
コンビニにでも行こうと腰を上げた。
その瞬間、
目の前にあった物干し竿に干されている
服に混じって、
真っ白い子供が首を吊っているのが見えた。
俺は生涯で最大の悲鳴をあげ、
同時に大きくよろめいて、
背後にあったガラスに盛大に突っ込み、
他人様の家に突入してしまった。
住人が起きて怒鳴り込んで来た。
事情を説明したが理解は得られず、
後日にガラス代を弁償する。
さらに、
パソコンの電源は二度とつかなかった。
(終)