物音がして一階に下りてみると

包丁

 

俺が小学2年生の時の話。

 

ある日、

熱を出して学校を早退した。

 

学校と家はわりと近い。

 

父は仕事、母は出掛けていた為、

一人で歩いて帰って来た。

 

二階の部屋で寝ていると、

一階から物音が聞こえた。

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一階に居たのは・・・

母が帰って来たのかなと思って

一階に行ってみると、

 

なぜか隣の家のおじさんが居た。

 

手には包丁持っている。

 

昼間に家にいる俺を見て、

おじさんはビックリしていた。

 

「おじさんが居たこと、

内緒にしてくれるやんな?」

 

おじさんがそう言うと、

 

包丁に釘付けになっていた俺は、

怖くてうんうんと頷いた。

 

親に言いたかったけれど、

 

殺されるかも知れないと思って

結局は言えなかった。

 

それからは月に一回、

 

おじさんが沢山のお菓子を

持ってくるようになった。

 

笑顔で「これ、食べや~」と

渡してくるおじさん。

 

どうしてお菓子を持ってくるのか

分からなかったけれど、

 

おじさんの笑顔が怖くて、

いつも硬直して受け取っていた。

 

母は「この子、恥ずかしがり屋で」

と言って笑っていた。

 

そして先月、

おじさんが亡くなった。

 

やっと自由になったと思った。

 

先週、村の飲み会で、

おじさんの話を耳にした。

 

『おじさんは競馬やパチンコが

大好きな人だった』

 

『おじさんはアル中で、

よく色んな家の飲み時に出没していた』

 

『おじさんが亡くなってから、

 

多発していた村での窃盗事件が

ぱったりと無くなった』

 

等々・・・

 

未だにあの時のおじさんの顔と包丁が

トラウマになっている。

 

(終)

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