勉強の合間に友達と電話をしていたら
これは、後輩の井上が中学生の時に体験した話。(名前は仮名)
深夜1時頃、井上は一人きりのリビングで勉強していたが、途中で集中力が切れて友達と電話をしていた。
井上以外の家族は寝ていたので、起こさないように小声で。
そして少し経った頃、廊下から物音が聞こえた。
耳を澄ますと、ペタペタと子供の足音のようだった。
いいかげんにしないと・・・
当時3歳の弟が起きたのかと思い、ドアを開けて廊下を覗いたが誰もいない。
おかしいなぁ?と思いながらも電話を続けていると、今度は足音と声が聞こえる。
しかも、その声は明らかに弟とは違う女の子の声。
ヤバイ!と思っているうちに、足音と声はどんどん近付いてきて、ついには井上がいるリビングのドアの前で止まった。
その足音と声の主は、何かをぼそぼそと繰り返し呟いていた。
「そろそろやめないととまるよ」
そんなことをずっと言っていたそうだ。
井上は恐怖よりも、え?何が?という感じになる。
次の瞬間、「バツン!」と大きな音がして、部屋の電気が一斉に消えた。
その時はその部屋しか電気が点いていなかったので断定できないが、おそらく停電だ。
そして、それまでずっと電話していた友達に、「今一人?後ろの方でぼそぼそと声が聞こえるんだけど?」と言われ、井上はパニックになって電話を一旦切ってしまった。
その後、電気は普通に点き、気付いたら声も聞こえなくなっていた。
井上はなんとなく大丈夫かなと思い、今度は台所で電話を再開した。
ちなみに、リビングで使っていたのは子機で、台所にあるのは親機。
受話器と本体にはコードが繋がっているからその場にしゃがみ込んで電話をしていたが、またさっきの声がぼそぼそと言っているのが聞こえた。
だが、今回はすぐ後ろから。
「いいかげんにしないと○○○○だよ」(○○の部分は聞き取れなかったらしい)
かなり怖かったが思い切って振り返ると、人形がちょこんと座っていた。
といっても、日本人形のような立派な人形ではなく、育児ごっこ用の声が出る可愛らしいもの。
その人形は井上が小学生になるくらいまでずっと可愛がっていて、それ以降は押し入れにしまっていた。
なので、なぜその人形が今ここにあるのか?
そう考えた瞬間に一気に鳥肌が立ち、電話を放置して親が寝ている部屋にダッシュした。
親に事情を説明し、その日は親と一緒に寝たそうだ。
その後は特に何も起こらず、その人形は近所の小さい子供にあげたというが・・・。
(終)